俳画と文 松下佳紀

太陽が沈んでも、まだ明るい夕空。そこに大粒の星がひとつ灯る。一番星だ。それを目敏く見つけた一番蛙が星と目を合わせケロロ、コロロと歌い出す。それは水辺や山間に澄んだ音色を響かせる。静かな歌は次第に熱を帯びてくる。小さな蛙だが豊かな声量だ。負けてはならぬと他の蛙たちも次つぎと名乗りを上げる。やがて命の歌は耳を聾(ろう)するばかりの大合唱となる。気がつけば夜空は紫紺の深さ、星々はすでに居並ぶ宝石だ。そうして蛙たちの音楽祭は夜明けまで沸騰する。以上は我が家の周辺の季節の一齣(こま)だが、こんな環境に暮らせる日々をありがたく思う。が、最近は不耕作地が増え、猪があちこち出没するなど、自然が荒れてきたのは至極残念である。

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