シティライフの今年のテーマは「新たなる道程も手を取り合って」です。
新世紀を迎えるにあたって、新しいことにチャレンジしている人や第二の人生を歩んで
いる人など、様々な意味で新しい道程を目指す人達をご紹介していきたいと思います。あけましておめでとうございます。
ナネットさんが坂本賀一さんと出逢ったのは3年前。千葉のファーストフード店で、注文がうまく伝えられず困っていたナネットさんを助けてあげたのが賀一さんだった。賀一さんは学生時代から英語が好きでアメリカ旅行も楽しみ、また、いつか英会話の勉強を始めたいと考えていた。ハワイから来たというナネットさんに親しみを覚え、いつしか互いに連絡を取り合うようになった。そして、2人の交際は始まり、この春結婚した。ナネットさんは皆から「ジェニー」の愛称で呼ばれ、賀一さんとは「ラブ」「ハニー」と呼び合う。仲睦まじい2人だが、決してすんなりと結婚までこぎ着けたわけではない。賀一さんの母親の美代子さん「実は、ジェニーは再婚。息子のケンを連れて、うちに嫁いできたのです」と、話す。
様々な生き方が容認されるようになった今、子どもを連れての再婚も珍しくはない。でも、それが外国人女性となると、まだその数は少ない。そのため、本人達だけでなく家族にも結婚に対する不安がうまれることが多いと聞く。ナネットさんの両親も二度目の日本人男性との結婚を心配していた。美代子さんも「最初は人並みに悩みました。でも、私は息子が好きになった人だから間違いない、信じよう!と思ってから不安や迷いはなくなりました。たしかに、いろんなことを言う人がいます。人の口に戸は立てられない。だけど、過去ばかり振り返っていたら、人生暗くなってしまう。私もジェニーも前向きに生きていこうと決めたのです」。ナネットさんの両親も、2人の交際期間中に来日し、坂本家の人々に会って以来、ナネットさんに「お義母さんを大事にしてね。こんないい人達はいないから。家族を大切に」と、電話で話すたびに言うそうだ。
賀一さんは東金で75年続いたパン製造販売会社h木村屋ベーカリーiの3代目。古い街の老舗の若奥さんとして新生活を始めたナネットさんは「もちろん、この結婚生活にためらいや不安はありました。商家の嫁という立場にも、あと日本語でうまく自分の言いたいこと、きちんと伝えられるかなど。でも、おかあさんや主人や皆のおかげで、やっと少しずつ慣れてきました」と、微笑む。近所に住み、共に店で働く賀一さんの妹や弟夫婦も、ナネットさんを温かく迎え入れた。本店で接客するナネットさんは「礼儀正しく謙虚で相手を敬う心を持つ女性」とお客さんの評判も良い。また、ナネットさんの何でも挑戦する前向きな姿勢は「私も見習いたい」と、美代子さんが言うほど。現在、日本語のひらがなとカタカナの読み書きを何とか覚え、漢字を勉強中のナネットさん。仕事も「パン作りはもちろん、私がやっている学校給食用のごはん作りなど、朝早く骨の折れる仕事もやりたいと言う。今の若い女性は嫌なことは受け付けないかたくなな所が見受けられますが、ジェニーは自分のできないことは教えてほしい、取り組んでみたいと言う。その気持ちは本当に尊いです」。美代子さん達が暮らす本店兼住居から歩いて5分の場所に賀一さんと暮らすナネットさんの奥様ぶりを尋ねると、「マンゴーの三杯酢とか、私達もハワイの料理を作ってもらいましたが、味覚や味つけの違いが勉強になります」と、美代子さんが言えば、賀一さんも「僕の好物はナスステーキ。ジェニーのオリジナル」と、つけ加える。とはいえナネットさん、やっぱり日本の味をと美代子さんに魚や野菜の煮物等の作り方を教わっている。「おかあさんの作る、いなり寿司やちらし寿司が大好き。早く作れるようになりたい」。ナネットさんが日本の習慣で、まだ馴染めないのは墓参り。ナネットさんの実家もキリスト教の敬虔な信者だが、墓を持たない宗派なので墓参りが理解できない。美代子さんは「今までの彼女の生活になかった習慣だから、戸惑っても仕方ない。でも、お墓参りは日本の大切な習慣。だから、私も四季折々に…お盆やお彼岸について教えたり、特に主人が亡くなっているのでお墓参りは分かってほしいのです。何はともあれ、ジェニーは今どきの女性には珍しいくらい思いやりにあふれ、いつも私をいたわり気づかってくれる。だから、こんな素敵な女性に育ててくれた彼女の御両親や、素晴しいお嫁さんを連れてきてくれた息子にも感謝しています。跡継ぎの嫁として、いろいろと理解してほしいこと、覚えてほしいことはありますが、少しずつその都度教え聞かせていくつもりです。ただひとつ、木村屋のおかみとしてすぐにでも心がけてもらいたいのは『和顔愛語』。これは私が嫁に来た時、義母に教えられた言葉で、常に優しい笑顔と優しい言葉をということ」。
瞳を輝かせ美代子さんと賀一さんの話すのを交互に見つめるナネットさん。彼女と同様の境遇にある人達に向けて「21世紀になりますが、まだ世の中には国際結婚について、理解がなかったり認めてくれないひともいます。でも、その中で自分がどれほど頑張りをみせるか、そして、自分のありのままをみせて、ひとに優しくできるか…その積み重ねで、きっと相手も自分を理解してくれ、優しさを返してくれるのだと思う。私も挫けそうになったことあるけれど、今は何があっても大丈夫。おかあさんや主人が私を見ていてくれることが励みです」と、エールを贈る。
このお正月には、おかあさんに着物を着せてもらい、皆で揃って初詣に出かけるのが楽しみなナネットさんだ。 (内)