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山武郡初の女性農業士
渡辺 和代さん(成東町)

 「農業ってスゴイ。いろんなことを学んで生かすことができるんです。」
 成東海岸近くの民家の門に『渡辺さんちの野菜達ん家』と書かれた札が架かっている。
 招き入れてくれる渡辺和代さんは4年前、山武郡で初めて女性農業士の称号を与えられたひとだ。

 農業士とは、農業経営に秀でた人が県の認定委員会で適格と認められ県知事から与えられる称号。制度としては戦後からあったが、その対象は男性が多かった。それが、最近になって頑張る女性にもという動きが出てきたのだ。
 現在、渡辺さんはご主人とその両親と中学生の娘さんと暮らす。2人の息子さんは、東京で大学生活を送っている。
 「私が大網白里町から嫁いできた昭和53年頃、成東町は夏は多くの海水浴客が訪れ民宿が盛んでした。当時、我が家は米・ジャガイモ・ソラマメ・大根・ネギ等の露地野菜を栽培する農業と民宿経営をしていました」。
 農作業は、子育てと家事の合間に手伝う程度だった。
 後に、義父から夫に経営が委ねられると、ペンションブームで経営が難しくなっていた民宿を廃業し専業農家になった。年間安定した収入を得るため、米作りと春大根・ホウレン草のハウス栽培を始めた。
 まだその頃の渡辺さんは、ご主人の指示通りに収穫や出荷をするだけだった。
 そんな渡辺さんがガッチリと農業と向き合う転機となったのは、普及センターで開催されたライフデザインセミナーに参加して。
 セミナーでは人生設計を立てたり、市外の農園に視察に行ったりした。その時に、良きパートナーと楽しく農業する生き方や農業は発想であることを学んだ。
 これに刺激を受けた渡辺さんは、平成5年、セミナーで意気投合した仲間達と、農家の奥さんだからできることを何かやろうよと朝市に出店。自家製の漬け物や菓子など加工品を出品した。
 「この時、自分に生産技術がないこと、それまで主体的に農業に取り組んでこなかったことに気づいたのです」。
 思い立ったら即行動に移す渡辺さん、同じ思いを持つ人達に声をかけ農業技術を学ぼうと、いきいきセミナーの開催を要望し教室が実現。野菜栽培の基礎知識や農業機械の操作等勉強した。
 「今まで主人まかせだったことに取り組むことで、農業にやり甲斐を感じました。すると、今度は収入にも目が向いてきたのです」。
 農業従事者としての目覚めだった。
  朝市に出店しているうちに、商品としてもっと付加価値をつけたいと思うようになった。平成8年には、保健所の菓子製造業の許可を取った。
 出荷時に規格外だからと廃棄処分してしまう野菜も、どう生かすか考えた。どのように使い、どう売るか。たとえば、春菊。
「出荷する際、茎は捨てていますが、ドーナツや餅に入れ作ったオリジナルの菓子は好評なんですよ。私のこだわりは、自分の家で収穫した野菜を使うこと」。
 ネーミングも大事と、愛情かけて育てた野菜という気持ちを込めて『渡辺さんちの野菜達』と商号を決めた。
 「食が人と人を結ぶということ、確かにあると思う。私の直売はまだ、こづかい程度の収入しかありませんが、自分の手作り品を待つ人がいるという喜びがあるからこそ、楽しみながら頑張れる。また、手に取ってもらえるよう、ただ並べるだけでなくイラスト入りのレシピ等を付けたり工夫もしています」。

 同時期、パソコン教室にも通い、経営簿記の練習を始めた。結婚前に銀行勤めをしていたのでコンピュータに違和感はなかったし、商業科を出ているので簿記は得意だったが、当初は「操作の途中でビーッとか鳴るとキャー!」。それが今では、家計簿や農業経費はパソコンで管理しているほど。ホームページの作成も計画中。
「自分が今までやってきた積み重ねが、こんなところで生きてくるんだと嬉しかった。農業ってすごく面白いと思い始めたのです」。  農作業と家事の合間をぬってのセミナー参加と、頑張り屋の渡辺さん。
 「家族や友達の励ましがパワーの源です」にっこり笑う。
 成東町といえば、まずイチゴを思い浮かべるが、
「イチゴは有名だけど観光イチゴ。ネギや大根は、国の指定産地になっているくらいなのに、朝市で出品しても『えっ、成東で大根を作っているの?』なんて言われる。この地区で作られる『緑海大根』は、砂土なので砂丘で作ったものと同じに真っ白できれいで、柔らかく甘いのが自慢。ただ、作柄や土壌、ハウスか露地かなど作り方が各農家によって違うから、緑海大根といっても、十把ひとからげにできない。そして、私達は自分達の作った野菜は、どこよりも美味しいと信じています。だから全て一緒に売るのではなく、ブランド化して『自分の家の大根』として売っていきたい」。
 渡辺さんは、子育てや農業従事者としての思いを表現したエッセイ等で、幾つものコンテスト受賞経験もある。
 平成10年に受賞した『毎日農業記録賞』の応募の動機も、農業という職業の素晴らしさを理解してもらいたくて。
 「子どもの教育でお金がかる間は家族のための農業。子ども達が成人したら、自分達の楽しみを見つけながら2人のための農業を。歳をとっても農業を離れず、子ども達に農業の楽しさを教えてあげたいし、農家でなきゃできないことを伝えていきたい。そして、ゆくゆくは、たくさんの人を受け入れて巻き込んで、地下足袋で楽しくコーヒーが飲めるようなお店を持ちたいな」。
 渡辺さんの夢は広がる。(内田)

《お問い合わせは》
☆『渡辺さんちの野菜達』
はJA山武郡市本所前の直売所・緑の風で購入できる。
電話 0475-82-3214

 



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