「くーねるふんだーすの鈴木です!」と、カーネルサンダース(ケンタッキーフライドチキン)ばりの巨体とヒゲで笑顔を振りまく東金市の鈴木和美さんは、バリアフリーをはじめとするボランティア活動に人生を懸けている。
鈴木さんのボランティア活動上の名『くーねるふんだーす』とは、読んで字のごとし、食べて寝て排便するという意味。すべて日常の当たり前の行動のようだが、障害者にとってはそれを当たり前にできる環境が整っていない、と鈴木さんは言う。
昨年2月、鈴木さんは突然、脳梗塞で倒れた。一命はとりとめたものの半身不随に。医師からは「一生、車椅子か寝たきり」と宣告され、それまで健康そのものだっただけにかなりの精神的打撃を受けたという。
ところが「もともと出たがりな性格だから」、寝ているのは退屈と、どんどん街に出た。「ところがトイレが見つからない。車椅子でも飲んだり食べたりは不自由しないのに。たった30センチの段差で、大の大人がおもらししちゃうなんて羽目にもなる」。
社会福祉協議会に車椅子対応のトイレを問い合わせた。しかし鈴木さんが満足いくものはない。「だから、『車椅子のまま入れるトイレありますか?探しています』というカードをつくって、それを掲げて外出するようにしたんです」。そして街で出会った人からの情報を元に、引き戸、押し戸などの詳細とともに車椅子対応トイレをリストアップした。
せっかく作ったリストだ。ひとりで使うのはもったいないと、車椅子の人に会うたびに配った。「人のため、なんてカッコのいいものじゃない。ただ、差し上げるととても感謝されるんです。それを見て、ああ、こんなことで人って喜ぶんだなと」。行動範囲を広げるために始めたトイレ探しだったが、鈴木さんは更に車椅子で入れるレストラン、ホテル等と対象を広げていった。
そんな鈴木さんの行動が東金市内のボランティアの人たちの目にとまった。「介護とかバリアフリーとか一切興味がなかった」鈴木さんが、『くーねるふんだーす』として活動をスタートさせるのは、その頃からだ。
実は、幸運にも鈴木さんは2ヵ月のリハビリの成果で、車椅子生活から脱却している。直後、就職活動も開始した。「でも、面接しても面接しても不採用。前職を辞めた理由を尋ねられると、つい正直に答えちゃう。今は健康体でも『再発する可能性あり』と」。
しばらく悶々とした日々が続く。「すると女房と子供が、人間いつ死ぬかわからないし好きなことしてと言ってくれてね。人様が喜ぶことをして感謝されればいいと」。
4月から本格始動した東金NPO協会(ボランティア活動を支援する非営利活動法人)の事務局長にも就任(もちろん無償)、より積極的に動き回ることになる。
「自分がこれだけ仕事がないなら、障害を持つ人はどうなるんだって思った。ハンデを抱えている人に会い話を聞こうと苦情や要望を集め始めて回る中で、痛感したのはネットワーク作りの必要性。手話、点字などボランティアサークルは数多くあるけど、それらに横のつながりはない。皆に声をかけるとすごい知恵が集まる。皆がまとまって力を出し合えば、もっと充実した活動ができるようになる」。
各サークル等ボランティアをする側、される側、様々な人々と会うようになった鈴木さんは、「脳梗塞で倒れる以前の47年間より、今の方がずっといい『出会い』をしている」と言う。「いい出会いをさせてもらえると思っているから、いい人が集まってくる。逆に、虚勢を張っている時には周りにそういう人だけ、ということも気づいた。ああ、世の中って捨てたもんじゃないなって思いますよね」。
視覚障害の夫婦の話も鈴木さんを感心させた。「健常者から見ると不便そうに思えるでしょ。でも、何事も工夫次第なんですよ」というその夫婦は、子供には鈴をつけて場所を把握できるようにしているとのこと。
また、盲学校の合唱コンクールでは、各自が指揮者とつながるエアー式の道具を携帯、指揮者は棒を振るかわりに強弱など曲の流れをエアーの合図で知らせるのだとか。
最近、鈴木さんが取り組んでいるのは、『転落防止用ガードパイプを設置する運動』への署名のお願い。夫婦との会話の中で、視覚障害者は平衡感覚の問題で3人にひとりが駅のホームから転落した経験を持つことを知り、同運動を始めた。「人の力、街の力を集結させること。それにはまず、声や心など目に見えないものを、署名などの意思表示で目に見えるようにしなくては」。
少し前、東金市内の小学校で講演をしたこともある。自らの人生とボランティア活動についての内容で、児童との対話や実践を多く取り入れた形式。その時、入学以来1度も手をあげたことのない4年生の子供が、鈴木さんの呼びかけに挙手、進んで前に出たという。これには教師生活30年という教師も驚きを隠せなかったとのこと。
10月14日(日)、中央公民館で、東金市初のボランティアのまつり「ときめきフェスタ」が開催される。その実行委員長として、鈴木さんの多忙な日々が続く。(富川)