市原市出津に住むフリーライターの今西乃子(36)さんは、小学校を訪ねインドのストリートチルドレンについて子どもたちに話をしている。
「ただ、貧しくて汚くてかわいそうではなく、貧しいなかでも頑張って生きている姿を日本の子どもたちに学んで欲しかったのです」と今西さんは話す。2年前、マザーテレサの生き方に興味を持ち、カメラマンの夫と訪れたインドで見たものは路上で生活する多くのストリートチルドレンだった。「親もなく、食べるものも着るものもなく、裸足で泥だらけ。なのに彼らに太陽のにおいと生きるエネルギーを感じました」。インド滞在中、ふたりはずっとストリートチルドレンを追い続けた。そして、知れば知るほど、彼らの一生懸命に生きる姿に感動させられた。
「当時、夫との会話で話題にのぼるのは日本の少年犯罪でした。社会が悪いの?教育が悪いの?家庭が悪いの?他を批判するのはカンタンだけど、じゃあ私たちは何かしている?ということになりました。幸い夫の撮った写真がありました。ストリートチルドレンのことをどうにかして伝えたかった私は、書いたこともない文章を書きました」。運良く教育関係の月刊誌で取りあげられたのをきっかけに、朝日や毎日の小・中学生新聞にも掲載された。
その後、今西さんは新聞社を通じてその記事を読んだ子どもたちからストリートチルドレンに関しての質問を受け取ることに。「私は勝手に書いているけれど、子どもたちがどう思っているのか理解していないのでは?これではいけない。直接子どもたちと話がしたい」。思い立ったら即実行、即行動の今西さん。「学校の授業で話をさせてください」と、思いつく小学校へダイレクトに申し込んだ。しかし、反応はイマイチ。「教育委員会を通さなかったから?それとも私に何の肩書きも無いから?」説明を繰り返す中で、唯一応えてくれたのは我孫子市の湖北小学校。以前からバザーの売り上げをユニセフに寄付していた小学校だった。
1年生から6年生まで全18クラス、1週間をかけた。夫が撮った写真を見せながら「この子たちはとても貧しいけれど、いつも笑顔です。とても友達思いで、少ない食べ物をみんなで分けあい、助けあって生きています」と、子どもたちに語りかけた。今西さんが伝えたいのは、悲惨な状況を助けて欲しいということではない。「日本の子どもたちの恵まれた環境が当たり前だと思わないで欲しいのです。字が読めて書けて、当たり前ではないのです。学校に来て教育を受けられることがどんなに素晴らしいか分かれば、学校に行くのがイヤだと思っていた子も行くようになるかもしれない。お母さんをうるさいと思っていた子も路上で生活する子を知れば、家族が一緒に暮らせることがどんなに幸せか分かってくれるかもしれない。助け合う気持ちや感謝の気持ちを学んで欲しいのです」。“食べ物を粗末にしない”“ノートは最後まできちんと使う”どんなことでもいいから子どもたち自身に気づいて欲しいという。
子どもたちが書いてくれた感想文を読んで、自分の気持ちが伝わったと確信できたときが何よりうれしいという今西さん。なかにはストリートチルドレンの支援をしてあげたいと申し出る子もいた。「時間がかかっても1クラスずつ話をするのは、一人ひとりの目を見て話がしたいからです。私が話したことから感じることは、子どもたちそれぞれで違うはずです。人間の幸せに条件があるのなら、それはお金や見かけの美しさではなく、人を思いやる気持ちや一生懸命に生きることだということを知って欲しい。大人も、社会が悪い、親が悪いと言う前に、まずは自分に出来ることから。何かをすることで見えて来るはずだと思います」。
「固定観念の強い大人は肩書きで相手を判断する場合が多いから、大人の前で話すのは苦手です。自分のアイデンティティーを大事に、子どもたちにどこまで自分を認めてもらえるか1回1回が試験みたいなものです。これからも自分の感動を子どもたちに伝えていきたい」と今西さんは話す。(国)