NO.6

「あくまで醸造元としての使命は、完璧な商品づくり。
ライブレストランで、町の観光スポットとしての役割や音楽愛好家を育てることにつながれば…」
 寒菊銘醸(松尾町) 佐瀬 道子さん

 松尾町に、明治16年創業の蔵元『寒菊』があり、最近、異色の蔵元として注目を浴びている。その理由は2つある。まず、約4年近く前に地ビール醸造を始めたこと。県内に蔵元の数は多いが、「造り酒屋と地ビール屋がドッキングした」のは、初めてだった。未だにどこも手がけていないという。アルコールのライト志向の流れから始めたが、寒菊の専務、佐瀬光久さんは「大量生産によって画一化されたビールの味とは、ひと味違う地ビールを造りたかった」と話す。
 更に、毎週土曜日の午後と月に1回日曜日の夜に『ホリデーライブ』をと、ビール醸造所内にバンドの生演奏が聴けるレストランを設けた。酒蔵コンサートを定期的に開催しているのは珍しい。
 現在、週末には観光バスも立ち寄るようになり、観光スポットの少ない土地だけに、地域活性化につながるのでは、という周囲の期待は大きい。
 ジャズライブは「寒菊ブルワリー&ビア・ハウス」で行われる。ブルワリーとは地ビールを造って飲ませる場所。
 このレストラン運営を担当しているのが、寒菊の『女将さん』こと奥様の佐瀬道子さん。「レストランのある場所はもともと竹林や畑。地ビール醸造所を造るため、造成したのです。最初、レストランをやるつもりはなかったのです。でも、創業当初からの築120年の酒蔵見物が人気で、観光バスのエージェントの方々に、立ち寄り所としてトイレと見学コースを造ってほしいと言われたのです。それで、観光バスが入れるように道を広げ駐車場を大きくとり、ビール醸造所内にトイレや日本酒の試飲コーナー、地元の土産物コーナー、売店を造ったのです。そして、観光バスが来る時には、松尾町朝市組合のお母さん達の手作り品の出店もお願いしたのです」。
 当時、コンクリートの床がひろがる醸造所内は休憩所も何もなかった。ところが、土産用と共に地ビールを買うお客さんの中には、その場で飲みたがる人も現れてきた。
 「椅子やテーブルも置いてくれ、という方が増えたので、急ごしらえで一升瓶の木箱をひっくり返して椅子代わりに、お酒のタンクのふたを逆さにしてテーブルにしました。そのうち、近所の方に宴会をしたいと言われ、つまみはないよ〜と答えると自分達で用意すると。その後も宴会の予約が入るようになり、ビンならそのまま販売できるけど、宴会の時にサーバーからグラスに注いでお客様に出すには飲食店免許が必要なので、急いで免許を取ったのです」。
 オープン当時は、客席で飲むビールはセルフサービス。好きな物を冷蔵庫から出して飲む。料金は醸造元だからと、小売り価格で提供し、自己申告。お客さんのニーズに応えていくうちに、現在のレストランのスタイルが出来てきた。
 地ビールは「できたてが一番」と、ブルワリーは人気スポット。だから、佐瀬さんとしては地域の観光スポットの役割を担うことにためらいはないが、地域密着型で…という信念は守り続けたいという。
 レストランのメニューは山田町で作るソーセージや野菜・海産物、と地場産品を多く取り入れた料理を揃え、同時に「地元で生演奏を聴く機会のない方にも気軽に来てほしい」と話す。
 アマチュアバンドによるライブは、テーブルチャージもつかず、チケット制もとっていない。
 今までの出演バンドの数は40を越える。メインはジャズだが、ベンチャーズのコピーバンドあり、ビートルズはじめポップスも。3月には、室内弦楽奏も出演する。佐瀬さんは、新しい音楽ジャンルを取り入れることにも意欲的で、6月から津軽三味線も隔月で出演が決まっている。
 ライブスケジュールを組むのも仕事のひとつ。アマチュアだけに本職があるため、調整は難しいようだが、「出演バンドの皆さんにも横の連帯感を持ってほしいと思い、他のバンドが出ている日にも遊びに来てよ…と声かけしたら、飛び入り参加のセッションをしたり、急用でメンバーが来られなくなった時にはお願いしたりと、思いがけない、しかもプラスアルファーの効果があり、皆さんにも喜ばれ、私も嬉しかったです」と、前向きな佐瀬さん。
 出演バンドの年齢は20代から60代と幅広く、遠方から来る人もいるが、大半は山武郡周辺。演奏希望者に対してのオーディションは特にない。「皆さん、現役というのがミソ。バンド演奏は趣味で楽しんでいますが、時間をやりくりして練習をしているのです。そんな方々にここを、演奏発表の場に提供したいと。来ていただいたお客様も、演奏してくれるバンドの皆さんも楽しめたら、私達は本望です」。
 ライブには県外や県内北部などから来るお客さんもいるが、やはり地元の山武郡内が多い。
 今後は、プロ演奏者のディナーショーもやっていきたいという。また、パーティをしたいお客さんにリクエストがあれば、無料で好みのバンドを用意するとも。
 松尾町の土地柄を尋ねると、「若い方はもちろん、お年をめした方も何か新しいことにチャレンジしようとする気持ちが強いですね。昨年11月から、ここで絵手紙の教室、あとで名付けたのですが、『下手でいい会』を始めたところ、すぐに朝市組合のおばちゃん達が集まってきました。皆、絵手紙をもらうたび、自分も描いてみたいが機会がなく悔しい思いをしていたそうです。毎月1回集まるようになり、ボランティアで教えて下さる方も3人に増えました」。春・秋には皆で弁当持参で画材探しを兼ねて、近くの里山に遊びに行く計画もたてた。
 ランチを食べに来たお客さんを「いらっしゃ〜い」と元気な明るい声で迎える道子さん。これからも、「まだまだやってみたい企画はありますが、内緒」と最後にひとこと。
 新しい試みに挑戦を続ける姿勢を持つ寒菊は、進化してゆく醸造元。
 道子さんからいただいた名刺には、企画部とあった。今後、寒菊という舞台で彼女がどんな役を演じてくれるのか期待したい。(内)

 TEL 0479(86)3050
 

 



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