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NO.32

漁師仲間で結成し、早22年
「大原サーフクラブ」

「自分たちの海は自分たちで守ろう」と、『大原サーフクラブ』(OSC)が海岸清掃を始めたのは6年前。
 以来、春から9月まで第1日曜日にメンバーが集まり、缶やビニールなどの人工物を拾ってまわる。それを見た他のサーファーが進んで協力してくることもあれば、「もし手があいてたら一緒にお願いします」と頼むこともある。お願いされたサーファーは「海に対する気持ちが伝わるから」喜んで参加してくれるという。
大原にサーフィンに来てゴミを落としていくと地元に思われたりしたら、サーファーのイメージが悪くなるから。
「若いメンバーが『シーズンだけでなく年間を通して清掃しましょうよ』と言い始めましてね、ああ、こいつもかっこいいサーファーになってきたなって思いました」と真っ黒な顔で笑うのは、会長の松本真志さん。 
 サーファーといえば金髪で多少なりとも軽いイメージがつきまとうが、「真剣にサーフィンを考えているヤツは礼儀正しいし、かっこいい」と松本さん。
 OSCの結成は22年前。当時はサーフィンの認知度はまだ低く、一部には『不良の遊び』との誤解も。そんななか「理屈ぬきでおもしろい」サーフィンをより楽しもうと漁協の若者を中心に結束したのが始まりだ。つまり、メンバーは海の仲間・漁師たち。
「サーフィンは漁師のライフスタイルにリンクしているんです。朝早く起きるから仕事の上がりも早い、という時間的なこと。そして、仕事ができない波の荒い時は逆に絶好のサーフィンびよりということ」。
 現在、創立時のメンバーも含め名簿上は60名(17歳〜50代まで)。このうち現役は半数ほどだが、時代を経て、漁師を生業としているのは松本さんを含め数人となった。
 その松本さんは、毎日午前2時30分起床。出港して前日に仕掛けた網を3時間かけて上げ、港に戻って網の修理、昼の1時に網を仕掛けに出港、という生活。
 ちなみにこの時期は何と言っても伊勢エビ。大原漁港は単一漁港としては全国一の水揚量を誇るという。
 そんな伊勢エビを大会の賞品にするのもOSCならでは。『春の大原一番』『秋の大原一番』という2つのローカル大会に加え、OSCでは年に一度のお祭的な大会「大原カップ」を開催しており(今年は8月12日)、東京のサーフショップや昔からつきあいのある選手を招待。ここ数年は120人ほどが参加している。
「多い年は200人ということも。でも今はそれだけの選手に対応する会場がない。テトラポットによってサーフポイントが減少したからです。15年位前は、大原から太東岬にかけての15〜20キロにテトラは3つ。それが、『護岸』という名目で砂浜全部に置かれていくことで、有名だったサーフポイントも次々に姿を消しました。でも海の力はそんなに簡単なものじゃない。テトラによって静まる波はほんの一区域。外にはその分急流をつくり、だから遊泳禁止区域に出てしまった海水浴客が呑み込まれるという最悪の事態も起こりかねない。海の力は凄いんです」
 有名なサーファーだった叔父さんも、5歳の松本さんに「1キロ泳げるようにならなければサーフィンをさせない」と言ったという。サーフィンしたさにそれを小学校2年生で達成。本物のサーフボードを手にした中学3年生の夏休み、最初の日にいきなり乗れたことでサーフィンに魅了され、3年の剣道部の県大会が終わると同時にのめり込んだ。
 そんなかつての松本さんを彷彿とさせる『新たな芽』が、春になると海にやってくる。OSCでは、そうした中高生を対象に毎年サーフィンスクールも開催。サーフィンと併せて、大原消防署の署員を招き人工呼吸や心臓マッサージ、止血法の講習を受けさせている。
 しかし、技術だけではない。日本サーフィン連盟のなかでも千葉東支部(勝浦〜片貝)はトップクラスに入るが、OSCでは仲間同士で切磋琢磨するなかで、しっかりした生き方をも模索していく姿勢が自然と生まれている。
 定職を持たないメンバーには「片手落ちではダメ。サーフィンやりたいなら仕事もやれ」と叱責が飛ぶ。「仕事をしていれば、限られた自分の時間を目一杯有意義に使おうと思うから、サーフィンをやるにもけじめや集中力がつく」。   
 実際、仕事を始めてからぐんぐん腕を上げたメンバーもいる。
「たかが波乗りです。でも、サーフィンはスポーツを超越したもの。海が教えてくれることは絶大なんです。感覚が研ぎ澄まされていって、自然の偉大さを身にしみて感じるんですね。漁師のすばらしさもサーフィンが教えてくれました。当たり前のようでいて当たり前でないこと、例えば、自然のなかで親子で働けること、確かに冬の海はつらいけど、凪の朝焼けの素晴らしさには『ありがとう』と思わず手をあわせたくなるような気持ち」。
 こう語る松本さんはOSCの4代目会長。   
「これまでは自分の生き方の中心にサーフィンがあった。でも、それを通して漁師という仕事を深く愛せるようになった。今は、漁師があってサーフィン…ですかね。歴代の会長は結婚等サーフィンから遠ざかるとバトンタッチだったけど、そうなると私も次に譲らなくちゃいけないのかな(笑)」
 いずれにしても『海』。
「大原で生まれて良かった。都会に出ていく若者は多いけれど、都会では決してわからない大切なものをこの自然が教えてくれる」。
 OSCはそんなことを文字通り肌で感じさせるクラブだ。  (富川)
      


『たかが波乗り。
でも、海が教えてくれることは絶大…。
 大原に生まれて本当に良かった』

会長 松本真志さん(31歳)

 



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