今、中高年の間でトレッキングがブームだ。テレビの趣味講座で取り上げられ、旅行会社のトレッキングツアーが人気を呼び、専門雑誌も多く刊行されている。中高年の初心者を対象にした『こまくさハイキングクラブ』(高沢一之会長)は、自然に親しみながら「健康維持、増進」「心身のリフレッシュ」「会員間の親睦、交流」を目的に活動する。昨年10月、40歳以上を対象に募集したところ、予想以上の会員が集まった。休日を利用し、月に1度日帰りで山登りを楽しんでいる。歩行時間は3〜4時間程度。休憩、昼食時間を入れても5時間程の山登りだ。目的地へはバスを利用する。気軽さが仕事を持つ中高年層に受け、現在会員は86名。夫婦での参加も多い。
会の発起人でもあり、ハイキングの企画や事務を担当しているのは松島一雄さん(62)。「とにかく山歩きの楽しさをたくさんの人に知ってもらいたいと思いました」と話す。高山植物の女王と呼ばれるコマクサは、他の花が咲かないような荒れ地に根を張り、可憐な花を咲かせる。少々のことではくじけない気持ちを会の名に込めた。女性会員が多いので、響きをやさしくひらがなで『こまくさ』としたという。
17歳の時から山登りを始めた松島さんは、これまでに500以上の頂きを極めた山登りの達人。自分の経験をもとに、初心者向けの山を選んで年間の計画を立てている。同じ地域に偏らないように、関東周辺の山を選ぶ工夫もしている。下山後は、地元の温泉で疲れを癒す楽しみも忘れない。
会では1年を「冬、早春」「春、初夏」「夏、初秋」「秋、初冬」の4季に分けて会員から参加者を募る。「季節ごとに、花が楽しめる山を選んでいます。また冬には雪の少ない標高1000メートル前後の低い山を、夏には標高1500メートルぐらいの山を選んで計画を立てます。参加、不参加は自由なので、自分の興味が湧いたところにだけ参加することもできます」。年に1度の夏山トレッキングでは、普段行かない標高2000メートル前後の山に1泊で登る。今夏は福島の東吾妻山、安達太良山への山行きだった。
会員の星野和子さん(52)は、「健康や体力が気になっていたので参加しました。まったくの初心者なので、正直自分が山に登るなんて不安でしたが、リーダーや会員の皆さんがペースに気を配ってくれるので、気持ちよく歩けました。なんといっても頂上を極めた時の達成感は最高です。一緒に歩く仲間とその感動を共有できることも喜びです。このサークルは年間計画がしっかりしているので、次はどこの山か分かります。それが楽しみとなり、また励みになります」と話す。トレッキングは初心者が1人で始めるには危険なスポーツ。それだけに、経験豊富なリーダーがいるサークルでの登山は、初めての人も安心して楽しめる。
1回の参加者は40人前後。あまり大人数になると、目が行き届かなくなる。これまでは募集定員を決めて先着順で受付ていたが、参加希望者が増えてきたため、今後は同じルートを2回に分けて行くことも考えているという。
山を歩く楽しみは3つあると松島さん。事前に情報を集め、目的地を決めルートを考えること。自然の中で汗を流し歩くこと。帰った後で、写真を整理したりしながら思い返すこと。「今、サークルでやっているのは、実際に歩くことだけです。山行きを何度も体験し、会員のみなさんが慣れてくれば、自分で計画する楽しさも分かってくるでしょう」。会員の中には、何人かで集まって自分たちの行きたい山のルートを作って、松島さんに助言を求めることもある。「会で行くのは初心者に無理のない山ばかりなので、いい意味で欲が出てきたのでしょう。山登りの楽しさを自分で発見していくのは大切なことです。次に行く山について、事前に情報を集めてやってくる人もいます。そうして山登りの愛好者の輪が広がっていってくれればいいですね」。
写真やテレビでしか見たことのない展望が目の前に開ける快感。自分の健康に感謝するトレッキングの魅力は、大自然を自身の五感で楽しめることだという。 (斉)