毎週1回、区民会館でカラオケを楽しむ会がある。平均年齢70歳の『三鈴【みすず】会』は会員9名。
講師の中村一雄さん(77歳)は東京の浅草生まれで、若い時から友人と集まり、趣味で歌を唄っていた。友人の中には『憧れのハワイ航路』を歌った岡晴夫や『上海帰りのリル』の津村謙など、知る人ぞ知る歌手がいた。
「私の声は伸びがあるのですが、特徴がなくてね。特徴のあった彼らは歌手になって一世を風靡しました」
中村さんが東金に引越ししてきたのは30歳の頃。戦争で家を焼かれ、一足先に家族が疎開していた場所だった。
仕事先でも歌のうまさで重宝がられ、宴会の余興に唄う事が多かったという。
「仕事をやめた60歳頃からカラオケが流行り始め、はまりました」
そして、老人会が母体となったカラオケサークルをつくり、ボランティアで歌を教えるようになった。
現在、市内で3つのカラオケサークルで教えており、福俵の区民会館で教え始めたのは7年前。最高年齢は84歳の女性。
「歌を唄うのが好きですが、仲間の皆さんに会えるのも楽しみです」と、ほとんどの会員が話す。
24歳の時、夫と死別し、その後再婚したがその夫も亡くなり、ずっとひとりだったという人は「辛い時は辛い歌を唄う、楽しい時は楽しい歌を唄う。自分の人生の思い出を頭に浮かべながら唄っています。いろいろあったけど、今が一番楽しいですよ」と話す。
「出会いがあって、別れがある。それが人生です。選曲は圧倒的に演歌。毎月新曲を2曲選んで音符と歌詞カードと歌うコツを書き込んだものを渡します。音符が読めない人がほとんどなので、最初は私が横について一緒に唄いながら曲を覚えていくんですよ。私も教えるため新曲を徹底的に覚えるので大変です」と中村さん。
今まで練習した曲は40から50曲ほどあり、その中からあらかじめ自分で選んだ曲を順番に唄っていく。時折、中村さんが「息の吸い方が少ないよ。もっと明るく唄う歌だよ」など、気がついたところを指摘するが、決して批評はしない。それがこの会のいいところだそうだ。
新曲を覚えようとすれば歌詞を覚えようと頭を使い、感情移入もする。みんなの前で唄うとなると緊張もする。
「家にいても何もせず、テレビばっかりみたりすると外に出るのが億劫になります。ここに来てから何事にも積極的になったという人が多いですね。カラオケはボケ防止になっているんですよ」と中村さん。
中村さんはこのサークルの中の出会いから、友人の輪が広がるのを1番大事なことと考えている。
最初はマイクをどうやって持つのかも分からなかったという会員は「私は音痴で兄にぬかみそが腐るなんて言われもしました。最初は恥ずかしかったけど、皆さんがいい人ばかりで、今では身内のように付き合えています」
年に2度、6月のおさらい会と12月の忘年会がある。それ以外にもホテルやカラオケボックスでの発表の場を持ち、普段とは違った雰囲気で盛り上がるという。
秋と春の農繁期は1カ月の休みがあり、会費はテープ代など実費のみ。毎週金曜日、午後1時から4時まで。福俵区民会館にて。 (大谷)