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NO.53

―埴生郡【はぶごおり】わらの会(長南町)―


手から手へ伝える
わざに思いをこめて

 日本は稲作の文化(藁文化)といわれ、主食の米はもちろん。ぞうり、蓑、畳の芯、壁や屋根材など、昔から生活に関わる多くに藁は使われてきている。
 この藁の文化を後世に伝えたいと、長南町を中心に活動する会がある。江戸時代の長南町の地名をとった『埴生郡わらの会』だ。 
 5年前、発起人の千葉惣次さんは長南町の農村改善センターにおいて、失われつつあるかやぶき民家の写真と、それまで好きで集めていた古民具を1カ月間展示した。『かやぶき民家と手わざの世界』と銘打ったこの展示会で、催しのひとつとして地元の人がぞうりや竹かご製作の実演を行なった。
 「こういった技術を継承する人がいない現在、このような『手わざ』を廃れさせるのはもったいないと、ぞうりを製作した鈴木勝三郎さん(百歳)にお願いして、ぞうり作りを、また鈴木さんの娘さんのいちさん、いとこのてるさんにもむしろを編むのを教えていただくことにしました」と千葉さん。
 最初は近隣に住む約20名の人が集まり会を発足したが、口コミで東京や千葉からの参加もあり、今では会員が40名にもなった。「全くの自由参加」で、来たい人だけが月に一度、主に会員の所有する約250年前に建てられた民家に集まる。
 「この昔ながらの土間やいろりがある家で、藁でぞうりを作ったりするのは最高の贅沢です」と会員。
 藁は米を作る会員から稲を収穫後、天日干しにしたものを提供してもらう。機械で稲を刈ると藁が短くなるので、わざわざ手刈りしたものだ。
  まず『藁つぶし』といって水にぬらした藁をつぶすことで、藁を柔らかくし扱いやすくする。基本は藁を手で綯うこと。「窮地になると藁にさえ頼るという人間の心理を言い表す『藁をもつかむ』という言葉がありますが、藁を綯うことでこんなに強くなるのが驚きです」と会員。
 縁側では何人かの会員が端を足で押さえながら、無心に縄を綯っている。普段の生活に使うのは『右縄』、しめ縄など神仏に関係するのは『左縄』と綯い方に決まり事があるそうだ。
 土間では江戸時代の『むしろ機』でむしろを編んでいる。二人の人が協力しながら編んでいくが、昔は女性の夜なべ仕事だったという。今回、地元の公民館で催される文化祭に出品するバックに使うむしろを製作中。縦糸は編んだ縄、横糸は単純に藁を通し、そのつど押さえながらの作業だ。
 居間ではぞうりを作っている人たちに「あんた、上手だねー」と鈴木さんが声をかける。なかなかの褒め上手だ。見て覚えるものなので、鈴木さんがぞうりを作り始めると、周りに人が集まってくる。「ぞうりは対の大きさを同じにするのが難しいの。でも失敗しても飾りになるし、世界でたった一つのものだからできると嬉しい」と今回が2回目という女性。
  「だんだん人間は自分でものを作ることをしなくなってきました。しかし人間はものを作るのが本能なのかもしれません。ここに来て縄を綯っているとストレスが発散され、心が癒されてきます。だから上達するより遊びと考え、藁を綯っています」と千葉さん。今回、千葉さんは5円玉を藁に編みこんで作る『藁銭』に挑戦。昔、家の建て前の時、梁から投げた縁起物だ。
  「『わらの会』の幸せは、なんといっても百才で元気な勝三郎さんに接する事です。勝三郎さんを見ていると、年を取るのが怖い事でも嫌なことでもないという気持ちになります。生命力をいただいている感じです。地元にはまだまだ手に技を持っている人がいるので色々教えてもらい、それを今後につなげていきたいと考えています」    (大谷)

第3日曜日、13時半〜16時。年会費(連絡費)千円
問 千葉惣次さん
TEL0475・46・0850


鈴木勝三郎さん百歳!!
       千葉さん。

持っているのは福俵。
足の前にあるのはワラ銭。
手前の円形のものはワラダ。
空中に投げるとタカの羽音に
似た音がするので
ウサギ狩りに使われた。

ワラをぬらしてつぶす
ワラつぶしの機械。

むしろ機

  



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