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1・狩猟の巻 『大多喜町猟友会』

 10月中旬の週末、朝7時『大多喜町猟友会』に所属する『有害鳥獣駆除員』の皆さんと、同町筒森地区にある山に入る。今回は、シカの駆除だ。全国的に『猿害』やクマなどによる被害がクローズアップされているが、ここ大多喜町も例外ではない。大多喜町にはクマこそいないが、近年、シカやサル、イノシシが増えつつあり、これらの野生動物が特産品の筍をはじめ農作物を食い荒らす被害が大きくなっている。そこで行政が地元の猟友会に、駆除を委託している。県内でも山つづきの勝浦市に次いで被害の多い大多喜町。大多喜町猟友会の会員数は64名。うち、有害鳥獣駆除員は21名。駆除期間は9月中旬から10月末までの土・日曜日(雨天や祭りと重なった時は予備日として水曜日)。
 山に入る際、猟犬を連れシカを追いたてる『勢子(せこ)』と、シカの逃げ道と思われる場所で待機して仕留める『張り手』とに分かれる。同行させていただいたのは後者。ベテランハンター、白井さんについて落ち葉の積もった山道を歩く。長い経験と勘で、その逃げ道と狙いやすいポイントが分かるそうだ。ポイントを決め『その時』を待つ。時折、犬の鳴き声が、連なる山々から聞こえてくる。幾度か発砲音がするが、「当たらなかったな。ここには来ないや」白井さんは呟く。音で分かるという。外れた時は銃声が響き、当たれば弾が動物の体を貫通して音が響かないそうだ。「11月15日から2月15日までは狩猟期間で、県内外から一般のハンター達がやって来るんだよ」などと世間話をしながら、移動先に向かう。
 この日は、これまでになく冷え込んだので、同行取材を申し込んだ時に脅かされた『ヘビ、ヒル』との出会いは、ヒルのみ。「明日は暖かくなるっていうから、もぐってるマムシも顔を出すだろうなぁ」と言う人もいれば、「捕ったマムシ?持って帰ってマムシ酒や骨焼きにする」と言う強者もいる。
 会員の平均年齢は60代。だが、皆、獣道や尾根、崖のような斜面を難なく歩き通す。しかも猟の基本「日の出から日没まで」だ。農業従事者もいれば自営業、勤め人、ご隠居もいるが、いたって身体は頑健で体力もある。
 4代目会長の高梨さんが猟友会に入ったのは30年ほど前。「当時は害獣というほどシカやサルはいなかったから、駆除もしていなかった。自分は射撃をやりたくて国家試験を受けて鉄砲を持ったんだけど、トリぶち(撃ち)やウサギぶち(撃ち)もやりたくて猟友会に入った。狩猟をするなら入会しないといけない。行政からの伝達事項を効率よく連絡するためにも、事故防止に統率を図るためにもね」と話す。また、会員達の多くが各地で催される射撃大会に参加して、技術がサビつかないように心掛ける。他、猟友会では、県の依頼でシカやカワウの学術調査のための捕獲もする。
 昼近くになって、シカを仕留めたと白井さんが無線で連絡を受ける。また移動だ。山を幾つか越え、現地に着くと急斜面を降り、シカとご対面。会長が県の調査機関に提出する書類と共に必要な歯を1本抜く作業を行う。毎年、僧侶を呼び慰霊祭を行い供養も欠かさない。
 わずかな時間で弁当を食べ終え、『シカ狩り』の再開だ。何度か場所を変えたが、結局、午後は仕留めることはできなかった。そのたびに、はぐれてしまった猟犬を犬笛で呼ぶ。シカ猟にはビーグル犬、イノシシには紀州犬など大型犬を掛け合わせた雑種を使う。「イノシシに噛みついて止めるんだから気の荒い犬がいい。猟犬は子犬の時から、檻に入れたウリ坊から慣れさせて仕込む。仕上がるまで時間がかかるさ。だから仕上がった犬は盆栽同様、何百万円とするよ」とのこと。木から木へと移動するサルには犬は使えない。通常は『猿害パトロール員』でもある会員が見回るが、住民からの苦情・通報を農林課が受けると現場近くに住む会員が現地に向かう。
 猪突猛進というぐらいだから、まさか戻ってくると思わなかった手負いのイノシシが、クイックターンで向かってきて襲われかけた話など聞きながら、日暮れ前に麓の集合場所へと帰途についた。 (内田)


お茶の花。
大多喜の山中にて

駆除前に町役場でミーティング

 



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