10月末、市原市保健センターで開催された『第28回健康まつり』に、思春期の性の問題等を提議しながら、気軽に子どもたちと話す帝京平成大学の学生たちの姿があった。彼らは、地域の同年代の若者たちの心や性の問題を一緒に考え、若者たちに生きることの大切さを伝えるピア・エデュケイターとして活動する。
恋愛や望まない妊娠(人工妊娠中絶)、性感染症等の性に関する問題。これらは、ごく普通の若者たちに一般化し、市原でも深刻な状況となっている。2年前、千葉県市原保健所の主催で開かれた『思春期専門委員会』をきっかけに始まったピア・エデュケイション推進事業に対応する形で、一昨年の4月、帝京平成大学臨床心理学科実習の中に、ピア・エデュケイター育成プログラムが取り入れられた。
「当大学で健康メディカル学部臨床心理学科立ち上げの準備をしていた時でした。人の心にかかわり、痛みや苦しみに手を差しのべることができる人材を育てることを目的にした学科です。机上の学習だけでなく、ボランティアリズムの中で地域貢献することは、学生たちにとっても大きな学びとなります」と、帝京平成大学臨床心理学科学科長の中谷三保子教授は、学生たちが地域へ出て活動する意義を話す。
少年犯罪をはじめ、学校や家庭でのいじめや虐待。心の健康に関する問題は多発し、若者が発信する心のSOSも多様化している。また、妊娠、中絶、性病の問題は、女性の身体を痛めつけるだけでなく双方の心も深く傷つく。そして、大切な命をなくすかもしれない大問題。ピア・エデュケイション事業は、正しい情報の提供と相談しやすい環境を整えるのが目的。「家族や先生には話しづらい事も、同年代の僕たちだと話しやすいのではないでしょうか。お母さんから子どものことについて相談を受けることもあります」「実際に中学生と話をして、自分が中学生だった頃よりも身体も心も大人の印象を持ちました。将来、認定心理士としてカウンセラーの仕事をする時、貴重な体験になると思います」と、積極的な話しかけを心がけているという。この他、市内中学校の文化祭へ参加したり、高等学校での思春期教室に参加する。
全国から学生が集まる帝京平成大学。学生にとっても4年間を過ごす市原を知るよいチャンスとなる。一昨年4月に入学した臨床心理学科の1期生(現2年生)120人のうち、一昨年の秋から保健所が開催している7回の『ピア・エデュケイター養成セミナー』に参加した学生50人が、現在地域で活動する。中谷教授は「ピア・エデュケイションは、市原保健所の前向きな取り組みと私たちの思いがマッチして実現したプログラムです。人間とは何か、自分とは何かを日々学ぶ学生たちも、与えることで地域貢献できる喜びを感じています。まだまだ学び途中の学生たち、活動する中で知らないことに気づくことが大切なのです。中高生は『お兄さん、お姉さんにも分からないことがある。一緒なんだ』と、受け止めてくれる相手がいることで安心し、学生たちは現場での気づきを学内に持ち帰る。それを私たち指導者がサポートしていくことで、皆が元気になれる関係をつくりたいと思っています」と話す。
プログラムを通じて、大学同士の交流や不登校の子どもをサポートするメンタルフレンドの活動も始まっている。市原市内に、何時でもピア・エデュケイターや中高生が集える拠点があれば、さらに活動が広がる可能性もあるという。 (国)