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新しい命を迎えて 
 家族それぞれの思い

 平成14年6月21日午前10時17分、佐々木健(たけし)さん(28)と春香さん(26)に、第2子颯太郎(そうたろう)君が誕生した。長女の優月(ゆづき)ちゃん(4)は、弟誕生の瞬間を父親と共にすぐそばで見守った。健さんは、助産師の指導で自ら我が子のヘソの緒を切った。
 
 同郷の2人が結婚したのは5年前。当時、健さんは埼玉にある日本工業大学の大学院に在籍する学生。春香さんは、ふるさと秋田で保育士として働いていた。結婚生活は、離れ離れでスタートした。長女優月ちゃん誕生のとき、健さんはたまたま帰省中だったため、お産に立ち会うことができた。しかし、卒論研究のため再び埼玉に。春になって就職し、一緒に暮らせる環境が整ったのは新入社員研修が終了し、正式に配属が決まってからだった。その時、優月ちゃんは10カ月になっていた。「子どもの成長を見守るのは親の役目。優月には本当に申し訳ないことをしたという気持ちでいっぱいです」と健さんは言う。
 今回の妊娠がわかったとき、春香さんにはいくつかの決心があった。里帰り出産ではなく、夫が会社からすぐにでも駆けつけられるところでのお産。家族の立ち会いが可能なこと。長女と共に入院できること。そして、自然な形のお産であること。何より、春香さんは、いつか母親になるであろう優月ちゃんにお産を見て欲しかった。最初、健さんは春香さんのこだわりに「そこまで条件をつけなくても」という気持ちがあった。母親にとって、生まれてくる命にとって、家族にとって、何がベストなのかを、ふたりで調べ、話し合った。そして、それらの思いを形に出来る助産院でのお産を選択した。
 「優月のときは独り病院の陣痛室で耐えていました。でも今回は、夫がそばにいてくれるだけで精神的に落ち着いていました」と春香さんが言えば「でも、私の出来る事といったら妻の腰をさすってあげることくらいでした」と健さん。「あのね、最初頭とおでこ。それからお顔が見えて、それから背中。ソータローって、ゆづが一番に呼んであげたの」颯太郎君誕生の様子を話す優月ちゃんにとって、今もその瞬間は鮮明だ。
 「日一日と成長するわが子を見て、命の神秘と素晴らしさを実感する毎日です。妻と子どもたちがこの夏の帰省で秋田に帰っていたとき、1週間会わなかっただけで颯太郎の表情がずいぶん豊かになっているのにおどろきました。今回は出来る限りそばで見守ってやりたいと思っています」と、健さんは育児にも積極的に参加する。ある時、あれだけ可愛いと言っていた優月ちゃんから「颯太郎なんか生まれてこなければよかった」という言葉が出た時があった。親が生まれて来た子にばかり気をとられた結果だったが、助産師からの的確なアドバイスで優月ちゃんの赤ちゃん返りの回避も出来た。上の子への接し方を学ぶよい機会になったという。「この出産を通して男として学ぶべきことが数多くありました。私も育児に関しては発展途上。まだまだ、これからです」と健さん。
 「独身の時は、親がうるさいと思った時期もありました。今となって思えば、それも私に対する愛情表現のひとつだったのですね。自分が親になって親のありがたみが分かると言いますが、本当に実感しています」と春香さん。「優月が生まれた時は私はまだ学生でしたが、いま家族を養うという立場になって、ひとり家族が増えて仕事にも張りが出て来ました」。同じ屋根の下で、同じ時間と空間を共有する家族。「今は将来どうしたいというより、今日1日が無事過ごせてよかったという毎日です。でもそんな毎日の積み重ねに幸せを感じています」と話すふたり。夫婦、親子、姉弟、家族の何気ない普段の暮らしの中で、互いが互いに育てられながら家族の絆はかたく結ばれていく。 (国)




  



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