| 全国で10万人を越える不登校の子どもたち。彼らが学校を拒む理由は様々で、一過性の場合もあれば、家にひきこもったまま卒業し長期化する子どももいる。
今井静江さん(五所在住 63才)は、中学校教師として35年間、不登校の子ども、学校に馴染めない子どもたちと関わった後、9年前に不登校の子と親のサークルをたちあげた。「彼らの多くは、自分自身や人間関係に不安や緊張感を持ちやすく、自分の意志をうまく表現できません。自分の気持ちを押さえこんでしまいます。教室にいられない子どもがいても、授業を受け持っていたので一緒にいてあげることができません。彼らが安心して過ごせる場所が欲しいと、ずっと思っていました」と話す。今井さんは体力不足を感じて教師を退職したのを機に、「家に引きこもり悩んでいる子どもたちが、安心して居られる場所を作りたい」と思ったという。
不登校になる子どもたちは、学校に行きたくなくても、一生懸命に登校する時期があるそうだ。彼らは大きなストレスを受けているが、頑張ればなんとかなると思い、大人には話さない。ぎりぎりまで耐えて、精神的な疲れが頂点に達すると、登校を拒否し始める。頭痛や腹痛などを訴える子もいる。親は驚き、混乱するが、ここで無理に学校へ行かせようとすると、子どもは親の無理解に傷つき、怒り、口をきかない、部屋にとじこもる、食事をまともにとらない、などの行動に出る。「何が原因となったのか、本人にも分からないことがあります。ただ、社会で決められた『学校』へ行けない自分を否定する子が多いです。劣等感を抱いたり、自分は必要ないのではと疑ったり、うつ状態になる子もいました」
辛さ、不安、苛立ちなどが心理的にピークになると、将来や学校のことなどを思うだけで辛く、何も考えられなくなるという。後でこの時期のことを思い出そうとしても、ほとんど覚えていないという子も多い。家族の心配や苛立ち、緊張感も敏感に察して、「皆は僕の姿を見るのも嫌なはずだ。僕はいないほうがいいんだ」と自己否定が強まってしまうこともある。
親も辛い時期で、「育て方を間違えたのではないか」と自分を責める人もいる。今井さんは、親と子が他の人たちと話すことで苦しさを分かち合い、閉塞感がやわらいで心のゆとりができればと考え、サークルを親子参加にした。母親に誘われて来る子もいれば、ひとりで参加する子もいた。
「子どもたちは相手の意志に逆らうことに臆病になっているため、不自由を感じることが多いのです。まずは『NO』といえるよう、自分で決めて自分で行動していいと感じられるように、活動時間も内容も制限なしにしました。指示されることもなく、欠席、遅刻、早退も自由です。来て寝ていてもかまいません。自分で『何かをしたい』と思えるよう、見守るようにしています」。嫌なことは嫌だと言えるように、子どもたちが自分の思いを話すまで待って、聞き役に徹している。「そのうち、子どもたちの表情が少しずつ豊かになってくるんです。それがとても嬉しいですね」
サークルの初期に参加した子どもたちは、現在20才過ぎ。元気になった子、人と関わるのがまだ苦手な子と様々。今でもサークルに通ってくる子もいる。彼らはサークルを心の居場所としてそれぞれ自分の意志で活動している。「傷が癒えるには、時間がかかります。子どもたちは、真剣に自分の内面を見つめ、考えているんです。大人も自分自身を見つめ、子どもとの距離をとり、子どもが求めてきたときに支えてあげられる関係を築ければいいと思います。目の前にいるありのままの子どもを大切にして、受け入れていく強さも必要ですね」
社会のルールや自分の枠に順応しようと耐えてきた子どもたちの辛さは、本人にしか分らない。子どもが自己否定に向かわず、自分の力を充分に出せるようになるためにも、大人たちは根気よく子どもと向き合い、その辛さを感じて肯定する努力が必要だ。彼らを信じ尊重することが自立へ向かう第一歩と、今井さんは子どもたちを見守っている。 (米) |