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NO.001

〜かきくけこの教訓〜

  
 今から10年前、3歳と1歳の娘を近所で遊ばせていた時のことだった。私たち親子の前に、ひとりの老紳士が通りかかった。その人は、お洒落な帽子をかぶり、カジュアルな靴を履いていた。そして私を見ると立ち止まり、話し始められた。
「私はね、中学校の校長をやっていたのですが、数年前に定年になり引退したんですよ。それから毎日、ひと駅分くらいは歩くようにしているんです」そう言うと、その人は娘の顔をのぞき込んだ。しばらく話したあと「あなたに良いことをお教えしましょう」と言われた。私は「え?」と少しビックリした。初めて会った人が何を教えてくれるのだろうか?と思ったからだ。
「かきくけこの教訓って言うんですよ」と、その人は私の横に並んで立たれた。「か、確認する。き、記録する。く、工夫する。け、見当する。こ、行動する。これを頭に入れて子育てしてごらんなさい。良い子になりますよ。迷ったら、この言葉を思い出して下さい。きっと良くなります。頑張って下さいね」と言うと、その人はニコッと笑い歩いて行かれた。
 私は不思議と素直にその話しを胸に収めることができた。そして、見知らぬ人からの思いやりの言葉に胸が温かくなった。今思うと、あの頃の私は決して楽しい日々を送っていなかった。子育てに苦悩し、余裕もなかった。それが私、いいえ、娘の顔に表れていたのだろう。
 10年経った現在、私は4人の子どもの子育てを楽しめるまでになった。見知らぬ人からの思いやりを、今度は私が若いお母さん方へ伝えていけたらと思っている。
  
執筆者の中嶋悦子さんは、この連載のタイトル『こでまりの夢』について「こでまりの花は、白い小さな花たちが集まって、てまりのような丸い形に咲くことから、その名がつけられました。子どもも大人も一人ひとりはちっぽけな存在ですが、みんな仲良く寄り添って成長し合えたら、こでまりのように見応えのある素晴らしい花になれるのではないか、と思いました。夢としたのは、みんなが幸せになれますようにとの思いからです」と話しています。
プロフィール 中嶋 悦子(なかしま えつこ)
昭和40年生まれ。宮崎県出身。二男二女の母。大網白里町にて子育てボランティア『はっぴーくらぶ』主宰。全日本家庭教育ポピー小手指支部、モニターアドバイザー。PHP大網友の会『めだかのがっこう』代表。平成14年、PHP賞受賞。同年、兵庫県西宮市子育て甲子園特別賞受賞。その他、多数執筆掲載。
  



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