NO.019
今年6月の終わり頃、小学3年生の女の子がランドセルを背負ったまま、私が自宅でやっている学習教室へやって来た。突然の訪問だった。 「私に勉強を教えてもらえますか」と、ハアハア息を切らして言う姿に、女の子の一生懸命で一途な気持ちが読みとれた。自分は算数がわからなくて、他の塾に通っていたが、ついていけず辞めてしまった。お母さんがお仕事をしていて帰りが遅いので、勉強をみてもらえないなど、子どもながらに何とかしなければと思って私のところに来たのだろう。 「いいよ。今日からやっていける?わからなくなったところは、どこからだろうね?」私は、学校での様子やお勉強に対する気持ちをできるだけ聞くようにした。すると、つまずいているのは2年生の引き算からだとわかった。掛け算九九も6、7、8段が怪しい。その結果、割り算ができなくて学校の授業が辛いものになっていた。たった1時間だったが、繰り上がりの足し算と、繰り下がりの引き算の筆算を根気よく教えた。すると女の子は、つまずいていたところがわかったらしく、「あぁー」と歓声を上げ、天を見上げるように目を輝かせ、満面の笑みを見せてくれた。 次の日は土曜日だった。女の子は、わかった喜びの興奮で朝4時に目が覚め、それから算数の勉強を始めたという。 子どもはわかる喜びを覚えると、今まで見ていた世界までが変わるようだ。 「先生!国語と理科で百点取ったよ!今度は苦手な算数で百点取るのが目標だ!」 1学期の終わりには、こんな喜びの声を聞かせてくれた。あれから女の子は、休みの日以外は毎日、我が家に通っている。そして私は、女の子のために学童保育を始めた。
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