「赤ちゃんが小さいとお産が楽かと言うとそうじゃないの。お産は、母親が産もうとすると同時に赤ちゃんも生まれようとするのよ。赤ちゃんが小さすぎると、産まれようとする力が弱いのでお産が大変なの」。私が初めて出産をした時、病院で出会った6人目を出産したベテランの母親から、こんな話を聞きました。
女性にとって初めての出産は本当に不安なものですが、赤ちゃんにとっても誕生の瞬間は不安なのです。『看護ふれあい学講座』の著者中井喜美子氏によると「赤ちゃんはお母さんの言葉や気持ちがわかり、分娩時の母と子の言葉のふれ合いによって、豊かな心が誕生することがわかりました。また、産まれた直後に赤ちゃんの心が傷つく場合もあることもわかりました」と言っておられます。
最近は多くの病院で、分娩後すぐ赤ちゃんを母親のお腹の上に載せて、対面させるようになりました。母親が、わが子と確認するだけでなく、赤ちゃんのほうも、この人はお母さんだと確認しているのです。このとき、母親が「よかった、よくがんばったね」などと声をかけると、掌を握りしめ、震えながら泣いていた赤ちゃんは、じきに泣かなくなるそうです。このとき、赤ちゃんを思いやった低いトーンの話し方が必要です。高い声で、自分ばかり興奮して叫んだり「泣かないのよ」と言っても赤ちゃんには伝わりません。母親が「苦しかったね、がんばったね」と赤ちゃんの気持ちを汲んだ言葉かけをすると、赤ちゃんは落ち着くといいます。その様子がビデオにも記録されています。声をかけてもらった後で、お風呂から出てきた赤ちゃんは、どの子もおだやかな表情で、ほほえんだまま眠るのです。
福岡県聖マリア病院母子総合医療センターの橋本医師は「誕生後の30分程の間に、赤ちゃんが新しい世界に敏感に対応することは知られていましたが、そのメカニズムはわかっていませんでした。最近、赤ちゃんにカテコーラミンという神経ホルモンの一種が分泌され、生まれて30分頃がピークで、2時間ほどすると出なくなることがわかりました。これがつかさどっているらしいのです」と話されています。
生まれてすぐに母親が呼びかけ、語りかける言葉は赤ちゃんの神経を刺激し、人としての脳と心を目覚めさせるのです。さらに、このときの対応が後の精神安定に影響を与え、育てやすくするということもあるようです。 (文・塩本京子)
【塩本京子さん】
30年間勤めた教職を退職後、親業インストラクターとなる。市原市内を中心に、親業の講座、講演活動を行う。
TEL.0436-41-2084
■親業訓練協会
TEL.03-3409-8355
http://www.oyagyo.or.jp/
【山口 高弘(やまぐち たかひろ)さん】
・1981年市原市生22歳 惣社在住。
・慶應義塾大学法学部法律学科在学中。
・小学4年秋から1年半、千葉日報紙上で毎週、父の随筆のイラストを担当。後、これをまとめた「お父さんの房総花だより」を出版。
・1997年3月からシティライフ紙上にイラストの連載開始。
・2000年、菜の花のイラストが堂本千葉県知事のFAXシートに採用される。