山武・海匝地域の福祉充実を目指し、ヘルパーなど質の高い専門職を養成するNPO法人『高齢者共生睦会』が、介護福祉の啓蒙活動として巡回福祉講演会を開催。東金文化会館での第2回は、日本自閉症協会千葉県支部長・大屋滋さんの『自閉症って…何?父親から愛のメッセージ』。大屋さんは多くの写真をスライドで見せながら、自閉症の息子さんを育ててきた体験を語った。
★自閉症は先天的な脳の発達障害
ようやく社会的に理解され始めた自閉症ですが、まだ引きこもりなどの心の病と勘違いしている方が非常に多い。息子の友貴は14才。生まれた頃は「親の育て方が悪い」という認識で、周囲の理解がなかなか得られなかった。私は脳神経外科医ですが、発達障害に関しては専門外。2才を過ぎても奇声をあげるだけで言葉を発さず、自分の興味あるところへひとりでどんどん行ってしまう、母親との接触を嫌う、同じことを何時間・何百回でも繰り返すという行動に途方にくれ、「私の育て方が悪い」と妻もかなり自分を追いつめました。いくつかの病院を受診し、自閉症と診断を受けたときはかえってホッとしました。自閉症の特徴は個人差がありますが、言葉の発達が遅く意味が通じない、こだわりが強く一日中同じ遊びを繰り返す、感覚が非常に偏り敏感で急に泣く・怒り出す、人との関わり方が分からない、などです。たとえば、声をかけられても意味が分からないので無視をし、自分の興味あるものをじーっと見つめていますし、何人かの子どもたちが仲良く遊んでいるのに、まったく無頓着にひとりで何かをしているんです。
★言語より視覚で認識しやすい自閉症 コミュニケーションは写真や絵を使って
話し言葉が苦手な自閉症の人は、何をしていいか、何が起きるかが分からず、不安になって大声で暴れるなどの問題行動になることがあります。私たちが友貴との生活で10年以上試行錯誤し、たどりついたのは、絵や写真を使ったコミュニケーションでした。簡潔で短い言葉と、写真や絵を組み合わせて提示する方法で、これが非常に効果的。脳梗塞などの後に失語症となった人にも応用できます。我が家では友貴のすることをカードにして壁に貼ってあります。始めて数カ月、友貴がスケジュールカードから「自分のしたいこと」を選んで、初めて自分の意志を示した時には、彼には彼の世界があるのだと気づきました。それからの友貴は、したくないものは自分でカードを外し、これからやるよという意味でカードを持ってきて、お互いに意志を確認し理解しています。病院で治療を受ける、買い物に行く、などもスムーズにできるようになりました。「お互いが分かるようにコミュニケーションする」ことが、友貴にとって何より重要だったんです。こうした障害に合わせたちょっとしたサポートが、バリアフリーの基本。周囲の気づかいや配慮が、自閉症のみならず、お年寄りや障害をもつ人たちの不安を取り除いて、今までできなかったことをスムーズにできるようにし、社会参加への支援につながるのです。
今回の講演では、一般参加者の「誤解していた自閉症について、すごくよく分かった」との感想とともに、福祉講座の受講生や実際にヘルパーをしている人の「勉強していたことがより具体的に理解できた。これからの介護の仕事に生かしたい」という声が多かった。主催する高齢者共生睦会は、他の地域でも講演会を開催、来年には茂原も予定している。(米沢)