今年6月、勝浦警察署のよびかけで管内3市町(勝浦市、大多喜町、夷隅町)にある12軒のコンビニエンスストア全店が加盟する防犯協力会が集まり、『ポリス・コンビニ(P・C)ネットワーク』調印式が行われた。
これまでコンビニで事件が起これば警察官が出向いていたが、コンビニ側からも犯罪につながりそうなことや不審者等を見かけたなどの情報を積極的に連絡してもらい、同時に警察官の立ち寄り警戒を増やそうというものだ。
様々な人が集まるコンビニは人に関する情報も得られる。特に、都会とは違い、夕方になれば商店が閉まってしまう地域での24時間営業のコンビニの存在は大きい。
勝浦警察署生活安全課の石毛寿子課長(47)は、千葉県では初めての女性課長であり、県警では2人目の女性警部でもある。船橋警察署、柏警察、空港警備隊、鉄道警備隊、浦安警察署、県警本部の生活安全特別捜査隊などを経て勝浦警察署に赴任してきた。
かつて「防犯課」と呼ばれた現在の生活安全課の扱う事件は広範囲にわたる。
「よくゴミから原子力までと言います。家出、覚醒剤、ヤミ金融、風俗、その他。交通課など他で扱わない事件すべて生活安全課と思っていただければ」と石毛課長。勝浦での犯罪事情については「犯罪そのものは少ない。だから防犯に対する意識が低いのです。でも、全く犯罪がないわけではありません。ストーカーやのぞき、少年の傷害事件などありますが、その数が都会と比べて少ないだけ」と話す。
また、地域性の現れた犯罪といえば、アワビやイセエビ等の高級魚介類の密漁や狩猟に関するトラブル、産業廃棄物の不法投棄などが挙げられる。
「今までは検挙に勝る防犯はなしと、犯罪者を捕まえることを第一としてきましたが、それだけでは犯罪が起きるのを抑えられない。犯罪の芽を摘み取る環境づくりを町ぐるみでしようと考えたわけです。そのためには住民一人ひとりが防犯に関心を持ち、自分達の町は自分達が守るという意識を高めなくては。人の集まるコンビニが情報ステーションとなっていただきたい」とも。
コンビニの従業員には来店客に注意を払い、周辺にも気を配り、挨拶をはじめなるべく声をかけるよう指導する。コンビニから警察に連絡が入るのは、迷子や迷い老人、酔っ払い、放置自転車が多いが、
「コンビニに大きなマスクをした女性が買い物に来た。実はその女性はDV(家庭内暴力)の被害者だった。殴られた傷を隠すため大きなマスクをしていた。また、コンビニで子どもが万引きした。普通なら保護者に引き渡して終わりだが、実は親から食事を与えられない虐待を受けていたことがわかった等、地域住民の情報が集まる場所であるのです」
事件につながる兆候が見られたら、とりあえず警察に連絡をしてもらう。犯罪が起こってから対処するのではなく、未然に犯罪や事故を防ぐため情報提供の必要性を強調する。
同時に、住民によるパトロール活動も始められた。3カ月ほど前に『防犯』と文字の入った腕章、帽子、車につける『パトロール中』のマグネット式のステッカー等の防犯グッズを、年齢や職業を問わず希望する人に貸出している。パトロールをする人には、「危険ですから警察官と同じことをしていただこうとは考えていません。見回りしていて、危ないな、変だなと感じたら警察に通報してくださいと、お願いしています。とにかく挨拶など声がけをしていただけたら。パトロールと堅苦しく受け止めず、主婦の方でしたら買い物の行き帰りに出会った人に挨拶をしてもらえるだけでも結構です。そんな皆さんの姿を子どもが見て育てば、少年非行も減るでしょう」
勝浦では海岸を訪れる観光客が車上狙いにあうことが多いため、「漁協組合にも海岸に停めた車の近くにいる人に声をかけてほしいとお願いしています。地元住民が駐車車両や人間に注意を払っていることがアピールできれば防犯にもつながります」と石毛課長。
昨年11月から始めた『P・P(ポリス・ポスト)ネットワーク』も継続して力を注ぐ。郵便局員が配達や集荷の際、変わったことがあれば警察と連絡を取り合い情報提供する。
コンビニ、地元住民、郵便局、いずれのネットワークにも共通なのは、警察が情報提供を待つのではなく、積極的にネットワークに働きかけること。「このようなことを見かけたり聞いたら教えてください」とタイムリーな事例を投げかける。たとえば、最近この地域で高齢者を狙った悪質な訪問業者が出没しているから、そのような人を見かけたら警察に連絡を。また、業者の出入りした家に立ち寄り様子を聞いてみてほしいということだ。市内でコンビニを経営する池田さんは「警察から犯罪の事例を聞かせてもらうのは参考になります。これからも警察とは密な関係を保ち、情報交換をして防犯に努めたい」と話す。
コンビニが日本で開業され約30年。今後、商売だけでなく社会的な地域コミュニティーの拠点としての役割が求められてくるだろう。勝浦の場合、まずは住民の防犯意識を高める牽引役が期待されている。 (内田)