NO.25

「みんなで人生のお茶しませんか」
NPO法人 おしゃべりサロン (茂原市)

 リビングが即席ステージ。和室と洋間に座った数十人のお年寄りが、三線(さんしん)の音色に聴き入り、琉球踊りに手拍子を送る。フラダンスに見とれ、オカリナやハモニカで演奏する懐かしいメロディーに合わせ、笑顔で体を揺らしてリズムをとり歌を口ずさむ。
 11月初旬、大網白里町と小中川を隔てて隣接する茂原市粟生野(あわの)にある『おしゃべりサロン』で地元の音楽ボランティア出演のコンサートが開催された。
 『おしゃべりサロン』は、ひとり暮らしや家にこもりがちのお年寄りが、自宅で家族や友人と過ごしているような感覚でおしゃべりを楽しむ場を提供することを目的に、昨年12月、NPO法人として発足した。
 代表の及川洋子さん(50)は沖縄出身。結婚を機に千葉に移り住んだ。看護師として病院に務めたり、ヘルパーやケアマネージャーとして障害者・老人施設で介護の仕事をする中で、自分は医療より福祉の現場で働く方が向いていると考えた。
 が、大きな規模の施設で介護することに限界や疑問を感じ、自分がやりたいのは家庭的な雰囲気で少人数の利用者をマンツーマンに近い形で世話することだと思った。そこで、介護保険制度が開始された2年前、まずは訪問介護をメインとした『まごころサービス千葉・大網介護サークル』を立ち上げた。そして、訪問だけでなくデイサービスも行いたいと一戸建てを借り、NPO法人の認証を受け『おしゃべりサロン』を始めた。
 「思っていた通り、ひとり暮らしの方はもちろん、家族と暮らしていても日中はひとりで話し相手がいなくて、おしゃべりしたい方や大きな施設は苦手という方は多い」と及川さんは話す。
 サロンでは花のスポット見物や芋掘りなど気分転換に「近場へお出かけ」もする。12月は近所にあるクリスマスイルミネーションの名所を訪ねる予定。
 及川さんはじめ5人のスタッフと十数人の登録スタッフ全員ヘルパー2級の資格をもち、20人近い各種ボランティアスタッフがいる。毎日3人の要介護認定された利用者が送迎付きでサロンに通ってくる(介護保険適用者は、デイサービス料金として1割負担で、介護度によるが700円〜1000円)。一応、受け入れを許されている人数だが、これに加え、介護保険が適用されない一般高齢者も料金を自己負担すれば利用可だ。(料金は送迎・昼食付きで1500円、送迎のみなら1000円。送迎も昼食も不要ならお茶代300円)。サロンは月曜日から金曜日の9時から15時まで利用できる。
 利用者は60代から80代、ひとり暮らしと同居家族のいる人の割合は半々で、要支援と介護1の人が大半。ほとんどが口コミや老人施設からの紹介だ。また、地元出身者より高齢になって県外から移転してきた人が多い。「楽しい老後を思い描いて、こちらに移り住んだのに友達のいない方は多く、寂しいと言います。まして都会から来た人はその必要がなかったから、車を運転できない方が多い。この辺りで車を運転できないと、気軽に買い物や映画に行くこともできず、行動範囲が狭くなってしまう」と及川さん。
 利用者のひとり、息子と暮らす田中さん(85)は「大網に来て20年以上経つけれど、お友達がいないんです。老人クラブは私が地元の人間じゃないからか、お話しても違和感があるし。でも、このサロンを知ってよかった。今ではサロンに行く日は朝から洋服選びして楽しみにしてるんです」と笑顔を見せる。同じ曜日にサロンに通う唯一の男性、青柳さん(65)も「まだ高齢者の集まりに出向くことに照れがあったのですが、連れ合いを早くに亡くし、ひとり暮らし。ここでとりとめない世間話をするのは楽しい。足が悪く自力で出かける事が少ないので、送り迎えもしてくれて助かります」と頷く。旬の食材を使った高齢者向けの食事も好評で、なるべくリクエストにも応じるという。5年前、四国から大網白里の娘夫婦の元に来た吉良さん(86)は「私は耳が遠いので、大きな施設は話しかけられても分からなくてイヤ。ここのように、いつもスタッフが身近にいてくれるのは有難いです」と言う。各地のお国言葉も飛び交い、昔話や最近感じたこと等おしゃべりに花が咲く。
 サロン担当者の渥美さんは「軽い痴呆の方もいますが、ここでおしゃべりしていると皆さんから刺激を受けるのか良いみたいですよ。お茶を飲みおしゃべりしに来るだけの方もどうぞ」と話す。
 「現時点ではスタッフの数とスペースの問題もあり、要介護者の受け入れは満員状態。あくまでも家庭的であることが基本だから、スタッフを増やしても受け入れ人数をどーんと多くするつもりはありません。でも、利用希望者は多いので、他にこのサロンのサテライト的なものが地域にたくさんできてほしい。サロン運営したい方にはハウツーを教えます」。及川さんらスタッフ共通の願いだ。       (内田)

問い合わせ/おしゃべりサロン
TEL・FAX/0475・34・9745

『おしゃべりサロン』の一大イベント、コンサート風景

ボランティアスタッフと
三線を演奏する及川さん(左)

  

 



(C)City Life