「こんにちは。お元気でしたか?お弁当をお持ちしました」と、笑顔と共に手作りのお弁当を高齢者宅に届けて回るのは『レストラン友』のメンバーたち。4年前、地域に住む仲間が食を通して支えあいたいと、市内若宮団地でスタートした。
団地が出来て30年以上。入居当時、働き盛りだった核家族所帯は高齢化した。「出身地は様々。親戚も皆遠い。新興住宅地に暮らす私たちにとって、何より頼りになるのはご近所さんです。自分たちの老後を子どもたちや行政に頼るばかりでなく、地域で共に支え、たすけあいながら、生涯若宮団地で仲間と暮らしたいという思いから生まれました」と話すのは、設立メンバーのひとり加藤
征子さん。
「こんなのあったらいいね」と、構想だけは15年以上前からあった。活動拠点、ノウハウ、運営費、地域の理解等、実現までには様々な問題をクリアしなければならなかった。しかし「待っているだけでは何も始まらない。自分たちでやらなければ」と、地域で福祉活動を続けて来た主婦6人で立ち上げたのが、会食、配食サービスのボランティア『レストラン友』だった。調理や配達に関わる活動はすべて無償、年間15万円の社協からの補助を受け、1食300円とした。自治会館の調理室使用料や光熱費は地域活動ということで割安にしてもらえたが、年間3千食の弁当を1食300円という経費で賄えるかという不安はあった。弁当箱も使えば傷む。当初はフリーマーケットなどで資金稼ぎをしたこともあった。入念なメニュー会議を開き、電卓片手に買い物をするスタッフの姿を見て、食材を提供してくれる人も現れた。
「地域の理解も得られるようになり、今では何とかやっています。ただ1回50食という限られたサービスです。お弁当を届ける先の選定は私たちに任せていただいています」という。自立した活動として自分たちの出来る範囲でやることが、継続の秘訣だと考えるからだ。口コミで集まった調理スタッフは、現在約50名。7グループに分かれ、自治会館での会食と団地内への配食、合わせて月6回の開店日の調理をシフトする。「初めはボランティアのつもりが、いつのまにか私の生きがいになりました。当番の日が待ち遠しいほど楽しみです。近い将来、私もお弁当を待つ身になるかもしれません」と話す。
演芸もあるお楽しみ会が一緒になった会食は、会の活動をより多くの人に理解してもらうためのもの。運転手や配車の問題もあり、回数こそ少ないが、会本来の目的は作った弁当を玄関先まで届ける配食にあるという。午前11時過ぎ、朝8時半から準備して作った弁当を車に積んで配食に出る。届ける相手は、高齢者だけでなく介護するお嫁さんの分や、独りで食べるのは美味しくないからと近所で集って食べる人数分だったり。細やかな配慮が伺える。「退院できてよかったね。今年もよろしくお願いします」と、短いながら相手を思いやる言葉が添えられ渡される弁当。この時のために朝から化粧をして待ってくれている老婦人、もう来る頃と玄関のドアを開けて2つ分600円を用意しているご夫婦。『レストラン友』の配食活動が地域にもたらすものが、食だけでないことを知るには十分だった。
午後1時、回収された弁当箱には感謝の気持ちが綴られていた。それが、スタッフの次なるエネルギーになるのだという。「作る人、食べる人、それぞれにいろいろな思いがあります。4年間のいろいろな失敗も楽しい思い出です。同じ団地に住む高齢者の環境も分かり、商店街の方とも顔なじみになりました。地域で暮らすということは、こういう事なのだと思います。みなさんのご協力に感謝しています」。今回の調理、配達を担当したグループリーダーの末続(すえつぐ)和枝(52)さんは話す。 (国)