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つながることから始まる社会復帰

 五井駅東口近く、大野東ビルの1階。朝10時、4〜5人が囲むテーブルの中央に、アメが山と積まれた。袋に傷や空気漏れはないか。アメの入った袋を、ひとつづつ選別する作業が始まる。小規模作業所『こすもす工房』は、在宅精神障害者の社会復帰の場として市原市精神障害者家族会(岩見初恵代表)が運営する。

 うつ病や統合失調症など精神科の病気を抱える人は、日本に217万人。障害の中でも、最もいわれのない誤解や偏見を伴う病気でもある。患者と向き合う家族のストレスも大きい。昭和63年、保健所の呼びかけで市原市精神障害者家族会『こすもす会』は結成された。家族同士で話し合う中、日中行き場のない当事者の話題が多くあがった。
 「家族だけで抱え込むのは、大変です。当事者を家から出すことは、家族の負担を軽くすることでもあるのです。集いの場は、患者にとっても家族にとっても必要な場所でした。ただ親睦目的だけで集まるのではなく、軽作業を通じて体力や生活のリズム作りをしながら社会復帰のステップにできればと、場所探しが始まりました」と話すのは、同会代表の岩見初恵さん。
 平成2年、市の建物を借り、病院や保健所から提供された器材や備品でスタートした作業所だったが、平成10年建物の取り壊しで作業所は拠点を失った。「当時、利用者は10人ほど。和紙工芸の他、割り箸の袋詰めや封筒貼り等の作業をしていました。週2日は五井の福祉会館で、1日はアネッサ(姉崎保健福祉センター)でという場所も部屋もその都度変わるジプシー生活でした」と話す。スタッフの負担は大きく、自前の作業所をという声が高まる中、理解を示してくれるビルのオーナーが現れた。精神障害者のための小規模作業所『こすもす工房』を設立して12年。手弁当でがんばった家族会の努力と地域の理解、そして行政の支援で何とか活動拠点を見つけることが出来た。平成14年、手作りの看板が掛かる新たな作業所がオープンした。
 週に4日、1日4時間の作業。午前だけでも、午後だけでも参加は自由。ある程度治療を終え、退院して自宅療養している間の社会復帰のステップとして通う人がほとんどだ。メンバーは20〜50代と幅広い。「保健所から紹介され、姉崎から電車で通っています。週に2日だけですが、生活にリズムができて来ました。ここで自信がついたら、アルバイトから始めてみようと思います」と話してくれた。家族からは「ここに通うようになって、とても安定しました。ひきこもることも少なくなり、友だちもできたようです」「家族同士のケンカも減り、本人だけでなく家庭内も落ち着きました」等の声が届いているという。岩見代表は「ここに来られる人はまだ恵まれています。もっと、苦しんでいる人が大勢います。また、遠方から自転車で来るメンバーさんもいます。このような場所が地域ごとにあればと思います。精神障害者だけでなく一般も含めた、地域の相談窓口的な役割を担う拠点として期待されている部分もありますが、設備もスタッフもこれからといったところです」という。
 市、県、国から補助があるとはいうものの、その運営はきびしい。スタッフは専属4名と定期的に参加してくれるボランティアが4名。昨年からは、県の予算で週に1日だけだが精神保健福祉士の新藤理恵子さんも加わった。作業所運営やボランティア養成のアドバイザーとして、スタッフにとっては心強い存在だという。「何役もこなさなければならないスタッフですが、いつでもメンバーさんの作業があるように仕事の確保には苦労します。2年前までは、手作りの和紙工芸品を売ってメンバーの工賃としていましたが、市内の本田製菓さんがアメ選別の仕事を提供してくださるようになり、今では全体の半分を占める作業になっています。地元企業の理解を得られ、大変助かっています」。割り箸の袋詰め作業や和紙工芸も、継続して行われている。作品は、ボランティアセンターの福祉ショップや道の駅あずの里で販売されている他、帝京大学病院や五井駅などにもスタッフとメンバーで出張販売する。
 精神障害は、本人にとっても家族にとっても受け入れにくい。社会復帰して、再び地域で生きがいのある毎日を送るためには、社会とつながりを持つことが大切だ。このような作業所が地域の中にあることで、より多くの人の理解を得たいという。   (国)

◆ 精神障害者作業所『こすもす工房』(定員30名)月、火、木、金 10〜15時
TEL・FAX/.0436・25・5258

運営スタッフ 左から岩見会長、新藤精神保健福祉士、
黒瀬副会長とボランティアのみなさん。右端は指導員の生稲さん

 



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