昨年9月、社会福祉協議会とボランティアセンター主催で、『傾聴(けいちょう)ボランティア養成講座』が行われた。全3回の講義と演習を受けたのは50名。その中の有志24名が今年1月から傾聴ボランティアグループ『ひだまり』を作り、活動を始めている。メンバーは40〜70代。傾聴は青少年に対する活動もあるが、『ひだまり』ではお年寄りを対象に、市内数カ所の老人養護施設やデイサービスなど、各6〜7名が担当となり、都合のつく日に通って話し相手をしている。
「お年寄りの身体介護や医療の面で施設や制度が充実しつつある中、さらに心のケアが重要となってきました。お年寄りの最大の悩みは寂しさや孤独感。ひとり暮らしだけでなく、家族と同居していても世代の違いでうまく理解してもらえない、話が通じないなど、孤独を感じているケースが多く見られます。そこで、同世代、またはより近い世代がお年寄りの悩みをきちんと聴いて共感し、不安を解消する『傾聴(けいちょう)』の活動が広く行われるようになっています」と、代表の釼持(けんもつ)省吾さん(75)は話す。
傾聴は、ただ話を聞くだけではなく、思いやりを持って相手へ心を傾け、会話を進めることを言う。お年寄りの孤独感を癒し、気持ちをほぐして判断や納得を促す。基本は「相手の気持ちに寄り添ってひたすら聞く」「相手の言葉の反復や問いかけなどで、こちらの共感や関心を示す」「忠告や議論はしない、自分の経験から憶測しない」「相手の表情、態度からもメッセージを読みとる」「沈黙でも無理に何か言わない」の5つ。痴呆症などでまったく会話がかみ合わないときも楽しい雰囲気で進めていく訓練や、心理などのカウンセリングの知識も必要だ。専門性を備えていることで、心の問題を解消する手助けにもつながる。
メンバーが活動するデイサービスセンター日夕苑。入浴タイムのお年寄りたちは、自分の番がくるまで、ただ黙って座っていることがほとんどだという。メンバーは、それぞれ声をかけ、1対1で話を始める。「今日はいいお天気ね」とさりげない挨拶で隣に座り、食事のメニューや施設で行うレクリエーションのこと、花など季節の話題を投げかける。お年寄りによって、興味を示す話題は違う。耳や口も不自由で、うまく言葉も出てこないため、自然に話せるようになるまで時間がかかる。顔なじみになると、誰にも言えない過去や現在の辛い体験などを語ってくれることもある。気持ちが落ち着き、前向きに生きる意欲が出るのだという。「きっかけづくりに一番苦労しますし、お年寄りの気持ちにそった会話に慣れるまでが大変です。でも、ここに来るのは楽しい。お年寄りとふれあって優しい気持ちになれるし、また来て欲しいと言われると、すごく嬉しくなります。私たちも子どもたちが独立し、夫との会話も少なくなりがちなので、意識するようにしています」とメンバー。
「傾聴は、子育てが終わったり定年で現役を退いた年代の生きがいづくりでもあり、また、近い将来の親の介護や自分の老いに対する準備でもあります。それが私たちの心の支えにもなるんですね」と釼持さん。これからは、メンバーを増やし、定例会で体験を共有するなど技術の向上に努め、さらに地域へ出向いて、足腰が悪く自宅にいるお年寄りたちの元へと活動を広げていきたいと話す。 (米)