光風台に昨年11月開店したボックスショップ『フレンドリー』。店は、オーナー酒井玖美子さんの自宅を改装したもので、店内には、手作り品などが安価で並ぶ。品物の良さや店を守る彼女の気さくな人柄にひかれ、近隣からひっきりなしに女性客が訪れていた。酒井さんやお客さん同士の挨拶など、和やかな明るい笑い声が絶えない。そんな店内の一角に、市原養護学校と千葉大附属養護学校の作品コーナーがある。ボックスショップは、スペースの貸出料や販売手数料が店の収入となるが、酒井さんは「生徒さんの作品は無料で置き、その売上は全て学校に届けています。頑張った対価が、子ども達の励みになれば」。
実は酒井さんには、市原養護学校に通う息子の翔伍くん?がいる。そして、三和地区を対象としたサークル『ひつじ雲』の責任者でもある。「障がい者が地域の中で、ありのままの姿で暮らしていくには、地域の理解無しには厳しい。そのためにも、地域と交流を続けるこの会が必要なのです」。今年で活動3年目に入る会は毎月1回、ハイキングや料理教室など誰でも楽しめる行事を企画する。今では障がい者の家族や健常者親子、ボランティア協力者も参加し、多い時には70人近く集まる会に成長した。「手探りだった当初、人数も集まらずくじけそうになる時もありました。『うちの子はハンデが皆さんと違うから』と尻込みされる障がい児のお母さんもいました。それでも根気強く声かけをしたのが今につながったと思います」。誰もが気軽に参加できるよう会費や会員登録はない。ある健常児の親は「最近は学校でも障がい児と接する機会は少ない。こういう交流も一つの教育だと思います」と話す。周りの人たちも最初は接し方にとまどうも、回を重ねるにつれ自然と障がい児に手をさしのべるようになるという。
周囲の無理解と同じく苦しいのが、今の厳しい雇用情勢だ。「社会の受け皿が極端に不足してるんです。意欲はあるのに、働けない在宅の子がどれだけいることか…」。予算難の行政では、なかなか対策も全てこちらの望むようには進まない。「それなら」と小規模作業所の建設を目指したが、費用面などいくつも壁に当たった。そんな時に見たのが、八幡宿駅前にできたワンボックスショップだった。「これなら自宅でできる」。こうして誕生したのが『フレンドリー』だった。「作業所はできませんでしたが、結果的にプラスがたくさんありました。障がいを持つ子のお母さん達が気軽に集まれる場所や、地元の皆さんの交流拠点になれたり。ここで教室の開催を希望する方もあり、また新しい人の集まりができます。輪がどんどん広がるんです」。酒井さん自身にも親としてうれしい翔伍くんの変化があった。店を手伝ううち自覚が生まれ、家事をすすんで手伝ったり、学校からの帰宅時に自分から店のお客さんへ挨拶できるようになったという。
とはいえ、店はまだまだ赤字経営だ。「人を雇えるようになったら、まず他のお子さんから。息子は卒業後、甘えが出ないよう、余所で経験を積んでからと思っています。あと、できれば利益は、まちの清掃などボランティア活動費にも充てたいんです。今まで親も子も守られるだけ、待っているだけの姿勢でした。でもこれからは自分から求め、人のお役に立てるようにならなければ」。そして酒井さんは言う。「店の存在を通して、私みたいに障がい児の母親が自宅でできたということを、他のお母さん方に知ってもらい勇気を持ってもらえたら。『ひつじ雲』もずっと続けるつもりです」。
「障がい者が、ありのままで暮らせるまちにしたい」。長年の酒井さんの思いはようやく、実を結び始めたばかりだ。(野)