297バイパス・三又(または八声)から国道465号に入り、小湊鉄道といすみ鉄道の終着駅・上総中野駅手前で県道177号・勝浦上野大多喜線へ。数分も走れば、以前、本紙『あちこち・うぉっちんぐ』でご紹介したヒガンバナの寺(浄宗寺)のある三条地区。
バイパス沿いはチェーン店やスーパーマーケットなどが並び、全国どこでも見られるようになった郊外の風景だが、バイパスからそれれば昔と変わらぬ風景が広がる。三条の地はそんな典型的な山村だ。ここで住民達が、10年近くかけて行っている『むらおこし』がある。今回は、君塚達雄さん、君塚章さん、君塚幸広さんの3人にその舞台となる『大塚山自然公園』に案内していただいた。
「三条地区は13世帯、50人たらずの集落。他の村同様、過疎化・高齢化が進み、農地も山林も荒れ放題。何とか自分達の暮らす三条を元気にしたいと、10年ほど前に集落の住民が共有する大塚山を『中山間総合整備事業』の農村公園に申請した。でも、補助金が出るのを待っているだけじゃ何も進まない。だから、お金をかけず手間かけて、自分達の小遣いでできる範囲で、伐採や桜を植えたり、遊歩道の整備を始めた」と、酪農業を営む君塚達雄さんは語る。
県道沿い田代橋手前左側に『大塚山自然公園』の看板があり、その先、林道入口には『歩行者優先 車両通行禁止』、『万葉ロード入口』と大きな看板がある。君塚達雄さんが払い下げられた道路標識を譲り受け、ペンキを塗り書いたもの。
ここから山頂までは約2キロ、20分ほどの道のりだ。林道を整備し、山頂手前に広場を整地し、トイレを作った。「両側に菜種を蒔き、美しく黄色に彩りたい」という山頂までの400メートルの急勾配の道を階段状にし、歩きやすくしている。これらに使った木材は伐採したもの。コース途中の草木のそばには70以上もの万葉集の歌が書かれた札が立つ。この札も君塚達雄さん達が用意し、町の教育委員会で文字を書く人を探してくれた。手つかずの自然が残された大塚山には、日本人に馴染みの深い万葉集に詠まれた草木が数多く自生していることから、『万葉ロード』と名付けた。
『民話の里』と謳ったのは、この地域には『曼珠沙華寺』『呼び戻しの鐘』『田代滝の大蛇』ほか多数の民話が伝承されているから。これもまた君塚達雄さんが7年位前から、お年寄りに断片的に聞いた話を物語風にまとめ、民話の掘り起こしに努めてきた。
標高約240メートルの大塚山の頂上は整地され、手作りの廃物利用のテーブルや椅子が並び、伐採され眺望も良い。眼下に色づき始めた集落の木々や遠方の山々が見える。公園の正式なオープンは来年12月の予定だが、昨年秋、お披露目会と称して仮オープンし、地元の人々や関係者約40人が集まった。快晴なら富士山や九十九里浜も見えるとか。「見晴らしを良くするため、何10万本もの雑木を刈ったよ。しまいにはチェーンソーの刃が擦り切れちゃった。これを1本ずつ担いで下におろすのも一仕事だったね」「初めて植えた桜100本は、シカに囓られほぼ全滅。それで今度は畑で大きく育ててから山に植えて、シカ除けネットを張った」と3人は苦笑し合い、「10年近くかけて、ここまでやった。これから紅葉のシーズン。皆さんがハイキングがてら訪れてくれるのを楽しみに待っています」と、感慨深げな表情を見せる。
※車で行く場合、林道近くには駐車スペースはないので、手前、県道沿い右側にある三条公民館前の駐車場へ。又は上総中野駅近くにも町営の無料駐車場あり。電車利用の場合は、上総中野駅から徒歩約20分。