NO.8

〜自分の住むまちに誇りと愛着を〜
新しいまちづくりが進むちはら台

 団地内4カ所のバス停に描かれたストリートアートが話題となっている。中でも武蔵野美術大学の学生、大石美子さん(23)が半年をかけてちはら台中央バス停橋脚壁面に描く作品は、その芸術性の高さに行き交う住民の足も止まる。  昨年の夏休み、ちはら台はじめ近隣の4つのニュータウンをステージに開催された新しいまちづくりのイベント『菜の花里美発見展』(都市基盤整備公団協賛)では、首都圏23大学39ゼミから参加した学生が住民と共同してまちの新たな魅力を提案した。 「以前から『バス停の落書きがひどい』という声がありました。里美発見展には芸術関係の学生さんが多く集まるというので、プログラムにはなかったのですが『壁画を描いていただけないか』と事務局に働きかけたところ『ぜひやらせて欲しい』という回答をいただけました」と話すのは、ちはら台自治会長会の副会長を務める松本活夫さん。まちの美観を損ねる落書きは、どこも悩みの種となっている。消すには、手間も経費もかかる。消してもまた書かれるいたちごっこに、放置せざるを得ない状況だ。松本さんは、さっそく市に壁面絵画制作の許可願いを申請した。  壁面は、上り下りあわせて6カ所。事務局スタッフだった大石さんは有志を募った。「集まったのは全部で6人。私の担当以外の5カ所は、里美発見展の会期中に仕上がりました。空間演出デザイン学科を専攻する私にとって筆を持つのは久しぶり、納得のいく自己表現がしたいと思いました」あれから半年。大学の卒業制作を抱えながら、自費で東京国分寺から通って来る。「テーマは『こんとん』自分の中の整理できないものを絵で表現してみました。夏から秋へ、そして冬。何だか今、ここが自分の居場所のような気がしています。住民の方から、差し入れや食事をごちそうしてもらうこともありました。自治会のみなさんにも良くしてもらっています。毎日が私にとっては勉強のようなものです。何十年後、私の絵がどうなっているか、ちはら台を訪れるのが楽しみです」と、冷え込む夜も明かりを灯して制作に取り組む姿があった。あまりの熱心さに、自治会では絵の具代として里美発見展事務局にカンパした。  どんな絵になるのか、バスを待つ人も興味深く見守る。「壁画を描いてもらって以来、バス停の落書きは全くなくなりました。ベタベタと無断で貼られた広告も、住民が積極的に取り除くようになったんです。たかが落書きでも、治安の悪化につながりかねません。自治会では、住民が自分の住むまちに少しでも愛着を持てるようなまちづくりをしていきたいと考えています」ちはら台自治会長会の会長の宮崎保男さんは話す。  バス停には、手入れの行き届いた花のプランターも置いてある。ちはら台『千草会』の活動だという。自治会では、まちの美化活動に協力してもらっている団体には予算をとって支援する。「作業を外注すると大変な経費になります。自治会としても大変合理的な方法です。お世話もバス停に近い人にお願いするので、目も行き届きます」。美化活動だけに限らず、地域内で活動する会の情報はコミュニティ委員会で集約し、会報誌で発信する。「地域住民が情報を共有することが大事」と、宮崎会長は話す。今後は紙媒体だけでなく、ケーブルテレビのチャンネルで自治会独自の番組作りにも取り組む予定という。「自治会を法人化してあるので、行政が入らなくても企業や公団とも直接交渉できるようになっています。自治会独自の事業を行うことも可能です」  里美発見展のプログラムのほとんどは会期終了と同時に撤去されたが、東京芸術大学のゼミがちはら台公園に上総堀で掘った井戸は、住民が行政から常設許可を取って防災用井戸として残った。完成時に開催された井戸水のそうめん流しは、学生はじめ地域住民の交流の場となった。ちはら台の新しいまちづくりの可能性は、今後ますます広がる。(国)

 
松本さん(左)と宮崎さん(右) 大石さん

  

 



(C)City Life