NO.9

廃道となった旧街道を遊歩道に
復活させたい
行政 一成【なりゆき かずなり】さん
と有志の皆さん(睦沢町)

 生い茂った篠竹や雑草、倒れかけた雑木を刈りながら尾根づたいの道を進む。行く手をふさぐ枝や葉をかき分け歩くのは大変だが、皆の表情は明るい。  睦沢町山田谷日の子坂から夷隅町坂ノ谷まで約2キロの道のりだ。この道は約400年前の戦国時代からあった峠越えの旧街道で、20年前に広域農道が開通するまでは住民が隣りの夷隅町へ買い物や通院などに使う近道だった。『日の子坂旧道』と呼ばれ、馬やリヤカーも通った。廃道となった今は通る人もなく、竹藪化して荒れ果てている。  この旧街道を遊歩道として復活させようと考え、活動を始め呼びかけたのが行政一成さん(55)。一昨年、睦沢の自然と素朴な人情に惚れ、出版編集会社を退職し、兵庫県西宮市から妻の浩子さんと移り住んだ。  行政さんはNPO『樹恩ネットワーク』(都市と農山漁村の人々をネットワークで結ぶ)の会員だ。活動を思い立ったきっかけについて、「日頃から竹がはびこり樹木の密生する山を見るにつけ、何とかならないものかと思っていました。散歩コースの日の子坂周辺は、かつて縄文遺跡、古戦場首塚、馬頭観音、六地蔵、炭焼き窯跡、団子松などがあり、村の歴史と生活の大事な場で子ども達の遊び場でもあったと聞きました。その跡の幾つかは今も残っています。更に、旧道の両側には谷津田と美しい田園風景が続き、山の頂上から富士山が眺められたとも。だからこそ、もう一度歩けるようにしたいと考えました」と語る。  そこで、昨年秋、行政さんは地元で開かれる集会で、日の子坂を再び歩けるように整備したいと話した。「山に隣接する土地には、大勢の地権者がいるから」とアドバイスを受け、35軒の地権者の家を1軒ずつ説明に回り、同意書にサインを求めた。故意にひとの土地に足を踏み入れるわけではないが、道を開くため木々を伐採した際に、枝や木が隣接地に入ったり置くことを予測し事前に許可を取ろうと考えたからだ。  33軒の地権者から「本来は自分達がやることなのに、やってもらえるなら」と同意を得た。同時に町から『町道802号線』の公道施工許可も受けた。  そして、昨年11月、初めて皆で伐採とその後の清掃作業を開始した。地元の有志の中には積極的に協力してくれる地権者もいた。町外から「お手伝いしたい」、「散歩してみたい」等、一般の人達も参加した。  その後、今年2月まで伐採と清掃活動は続けられ、旧街道の約8割は『開通』した。今後も整備を進める。行政さんは「散策路とすることで山林の価値を見直し復活への気運を高めたい」と話す。刈り出した竹で竹炭を、間伐材でチップ加工品を作り、昨年できた総合交流拠点施設『つどいの郷むつざわ』で安く販売し、都市部から訪れる人達との交流を図りたいという。これに関連し隣接の日の子坂周辺に町が里山地区をつくる構想もある。「里山地区と日の子坂を周遊できるようにしたい」と行政さん。  そして、間伐材やチップの販路の見通しが立てばリタイア組やリストラ組など中高年者層を軸とした雇用促進事業に発展させたいという夢を描く。公共施設をチップ材による冷暖房・電力供給(木を燃やし、その熱を発電等に利用)に切り替えてゆく方向を探る。そのモデル地域を千葉につくり、稼働実験を行うよう今年の秋、知事室に提案する予定だ。  活動に対して民間の企業からも賛同を求めたいと行政さんは言う。「作業する人間と援助する人間がいて、その援助の仕方がエコビジネスにつながるよう専門家を交え議論したい。両者を結びつけるきっかけ作りと、僕ができることを、ひたすらやるだけです」  先進的な取り組みを実践するドイツ等への視察旅行に行き、日本のエネルギー対策の遅れを実感したという行政さん。睦沢に来てからも森林環境教育全国シンポジウムや一宮川流域改修計画意見交換会等に積極的に参加し、地元の『かずさ緑の会』とも交流を深めつつある。  近々、『里山クラブ・握手の森』を立ち上げるつもりだ。森と人、人と人、森と海、森と町、森と森をつなげたいという願いが込められている。随時、参加者募集中。毎回、参加できなくてもOKだとか。(内田)

問 行政さん TEL0475・43・0722

























かつて街道にそびえ立っていた峠の目印、団子松
 日の子坂入口
 六地蔵

  

 



(C)City Life