来年8月、北京でオリンピックが開催される。同時に、「身体障害者を対象とした世界最高峰のスポーツ競技大会」パラリンピックも行われる。
このパラリンピックに出場しメダル獲得を目指す、千葉県ではただひとり、ブラインドサッカーの日本代表選手に選ばれた千葉市在住の佐々木康裕さん(31)。大学卒業後、千葉県庁に就職して現在、広報の仕事を担当している。
佐々木さんがサッカーを始めたのは小学3年生の時。当時、流行っていたサッカーマンガ『キャプテン翼』を見て。先天性の緑内障で生まれつき弱視だったが、同じ盲学校の友達とサッカーを楽しんでいた。が、その後間もなく佐々木さんは網膜剥離になり視力が落ち、手術のため入退院を繰り返し、ようやく症状が安定したものの、視力は0・01に満たず、かろうじて自分の足元のボールが見える程度。「それでもサッカーが好きで、しばらくは続けていましたが、以前のような動きはできなくて、もどかしさは募るばかり。それからも視力は悪化し、中学に上がる頃には全盲の状態になり、サッカーに対する思いは薄れてしまいました」と当時を振り返る。
全盲になってからも、フロアバレーやグランドソフトボールなどをやったが、サッカーほど夢中になれなかった。そんなある日、2003年にブラインドサッカーという競技を知り、全盲でもサッカーができるんだ!と衝撃を受ける。
「もう飛びつきましたね!私にとってサッカーの魅力とは、ボールを自在に操り、自由にピッチを走り回り、相手と激しくボールを奪い合う。そして、ゴールを決めること。また、それが味わえるなんてと、約15年ぶりにサッカーにのめり込みました」。すぐにチーム『ハットトリック』を立ち上げ、今では毎週土曜、四街道市にある千葉盲学校のグランドで練習に励み、それだけじゃ物足りないと、他チームの仲間とプレーしたり、自宅で毎日筋トレをこなす。
サッカーへの情熱は熱く、もともと運動神経やセンスも良かったのだろう。当初は「ピッチ内の方向や距離感がつかめず、難しかった。でも、ボールの扱いにはすぐ慣れて、それが楽しくてハマッていったって感じかな」。始めて2年も経たないうちに頭角を現し、2005年から3年連続で日本代表選手として国際大会に出場している。
2001年に韓国から日本に紹介され普及したブラインドサッカー。パラリンピックでは2004年アテネ大会から正式種目になった。10月に韓国で開催されるアジア選手権で日本チームが勝てば、佐々木さんにとって初めてのパラリンピック出場となる。
今年7月から8月にかけてブラジルで開催された『第3回IBSA世界選手権大会』では、欧州王者スペインとの一戦では歴史的な1勝をあげた。日本が欧州のチームに勝ったのは初めてだ。結果は残念ながら4チーム中4位。スペイン、アルゼンチン、ブラジルといった世界の強豪と戦い、「あらためて個人技の高さを見せつけられた。予選では勝てたスペインに、3位決定戦でPK戦で負けてしまい、詰めが甘かったと反省しています。でも、メダルに手が届かないことはないという手応えを感じた大会だった」と、収穫は大きかったようだ。
「楽しく、前向きに、何でもあきらめずに続けること」がモットーの佐々木さんは、職場では独学で習得した技術でパソコンを駆使し、データ整理や記事の執筆などをしているが、「視覚障害者は情報にアクセスしにくいと言われているので、アクセスしやすいメディアを増やす研究もしてみたい」と話す。同僚や上司は、そんな彼のサッカー選手としての活躍も応援している。
実家は四街道市だが、「学生時代には寮生活していたから慣れてるし気楽だから」と、シングルライフを満喫中。「今は、とにかく北京でのパラリンピックに出場してメダルをとりたい!ブラインドサッカーをもっと認知してほしいし、地元から盛り上がりたいので、地域の皆さんにサポートしていただけたら嬉しいです」と話す。
視覚障害者対象に誕生したブラインドサッカー。でも、「障害者スポーツというより、目隠しすれば誰でも楽しめるスポーツ」と佐々木さんのチームメイトは言う。実際、やはり視覚障害者対象のフロアバレーは、最近ではニュースポーツとして健常者の愛好家も増えているとか。
ヨーロッパや南米で「人々に勇気と感動を与えるスポーツ」と親しまれているブラインドサッカー。
是非、皆さんも一度ご覧になっては(内田)
◆ブラインドサッカーとは…
GKを含め5人でプレー。ピッチの広さやルールはフットサル(5人制のミニサッカー)とほぼ同じだが、視覚障害者のスポーツとして開発された競技で、フットサルとの違いは、GK(健常者)を除く4人のプレイヤーは皆アイマスクをし(視覚障害といっても全盲、弱視と視力に差があるので公平にするため)、頭部を守るヘッドギアを着用する。ボールには鉛の小球が入っており、転がると音がしてボールの場所がわかる。ゴール裏には『コーラー』と呼ばれるFWにゴールまでの距離や角度を伝える人が、サイドラインには監督が立ち皆に指示を出す。
『ハットトリック』では選手(視覚障害者、健常者どちらも歓迎)&チーム運営のお手伝いをしてくれるボランティアスタッフ・サポーターを随時募集中。ブラインドサッカーを見てみたい、体験してみたいという方も、お気軽に佐々木さんまでメールを。