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庶民の『ふるさとの味』を伝える

山武巻き寿司研究会

 巷に『郷土料理』は数あれど、観光客対象であったり、入手しづらい食材や高価な食材を使ったものであることが少なくない。そんな「よそゆきの」ご馳走でなく、もっと手軽に作れる地域の「おもてなし」料理こそが、ふるさと自慢の味であったはず。が、食生活をはじめ生活習慣の変化、核家族化などの事情で、地域の各家庭が伝え続けてきた郷土料理の多くが姿を消してしまった。
 このようななかで、山武、夷隅、長生、君津など房総の主に農家で作られてきた『太巻き寿司』は、今も地元の有志『山武巻き寿司研究会』の皆さんの努力によって守り伝え続けられている。
 ここでいう巻き寿司とは、いわゆる「のり巻き」だが、たんなる具の入った太いのり巻きではない。切り口を見れば一目瞭然。巻き方ひとつで、花や動物、人の顔、文字など様々な彩りの文様ができる。いつ頃から作り始められたのか、ルーツは明らかではないが、かつては、めし・かんぴょう・のりの3つが食材の基本だった。
 戦後、栄養学が普及すると緑黄色野菜や卵、魚、チーズなどバラエティーに富んだ食材が使われると共に、巻き方に工夫や技術の向上もみられた。
 彩りの美しさは、すしの具が豊富になったことや、すし飯の色もカラフルになったことから。桜でんぶでピンク、すりおろしたニンジンでオレンジ、ウコンや卵の黄身で黄色、青のり粉や抹茶で緑のすし飯を。「なるべく体に優しい自然のものをと心掛けています。紫ならツルムラサキを使うなど」と会の皆さん。
 同会は山武郡市の各市町村で教室を開き、依頼があれば講師として出向く、巻き寿司づくりの代表者14名で構成されている。定番となっている巻き寿司に新しいアイディアを盛り込み改良・新作の考案、普及活動はもちろん各地に視察に出向き、その成果を各々の地域に広める。『山武の巻き寿司50選』も発行した。(現在は品切れ・増刊予定)
 会創立者の土肥偉満子さん(東金市・82歳)は、「昔から山武の土地では、巻き寿司は冠婚葬祭では欠かせない料理でした。各集落に『バンコさん』と呼ばれる巻き手の達人が、一人か二人いました。農家では娘を嫁に出すまでに作り方を、ひと通り教え込んだものです。家々で色々な巻き方をしていたから、これをまとめ残したいと考えました。そして、食文化を後世に伝えたいと1979年に会を発足しました。更にお米の消費拡大に役立てば、という思いもあります」と話す。
 年に4回行われている定例会では毎回、課題を決めて巻き寿司を作るが、今回は皆が好きなものを。「孫にリクエストされて、アンパンマンを。今度は機関車トーマスをって言われてるの」と嬉しそうに作る人もいれば、定番の『宝船』を「元々の図柄だと船の部分がスイカみたいに見えるという声が多かったので、動きを取り入れた船にしてみました」という人、四角い『四海巻き』という細工寿司を作る人もいる。
 巻きすにすし飯をのせ、菜箸で山・谷を作り具やのりを置き、形を整え巻き上げる。細巻きを何本か置いて巻くこともある。
 「子どもの頃、母に教わりました。私にも娘と嫁がいるので太巻き寿司の作り方を教えました。新住民が多い土地での教室は、太巻き寿司に感動して皆さん喜んで下さる」と話す会員も。「是非、作ってみたいという方は各教室までお問い合わせ下さい」と行木会長。
 特別な道具は必要ない。巻きす大小を用意すれば一般家庭にある物で作れる。
 基本さえ覚えれば、発想とアレンジ次第で限りなく新しい文様が生み出せる太巻き寿司。それがまた創作意欲をかきたてるのだろう。
 ちなみに取材当日、スカイパーフェクトTV!の『旅チャンネル・岸朝子のNippon食遺産』のスタッフが撮影の打ち合わせに来ていた。「おいしゅうございます」の言葉で有名な食生活ジャーナリストが各地を旅し、失われつつある日本本来の食を探り、「日本が誇る食文化として『食遺産』の認定を行う」内容だとか。(4/6放映予定)興味のある方はご覧になっては。 (内田)

問い合わせ/行木芳子(なみきよしこ)さん
TEL/0475・84・1424

松の葉を形にデザインした
松尾町の町章を巻き寿司に

土肥代表



 



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