今号から「探訪」は市原を飛び出し、近隣の市町村へ! 各地のスポット、話題を紹介。新・探訪の第1回は、歴史と名水の里・久留里を訪ねた。
●知り隊 房総丘陵のほぼ中央にある久留里は、かつての城下町。昔ながらの石壁や蔵、瓦葺の商家など、至るところにその風情が残っている。久留里街道沿の本町内では、掘り抜き井戸が各家庭分も合わせて42ヵ所あり、そのうち6ヵ所が一般に開放されている水の豊かな町だ。清澄、三石山系から地下水脈を通ってあふれ出てくる水は、炭酸やミネラル、乳酸菌などを豊富に含んだもので、地元では(生きた水)として日常生活に使っている。 町のあちこちにある井戸には、週末、多くの人が水を汲みにやってきて、順番待ちの人が並ぶ風景も珍しくない。この水が久留里に多くの美味しいものをもたらしてきた。その代表が日本酒だ。
●聞き隊 創業1624年の吉崎酒造は、千葉県内で一番古い酒造会社。久留里街道沿いにあり、敷地の奥には明治に建てられた蔵や煙突が見える。17代目当主・吉崎明夫さんに話をうかがった。「うちにも井戸がありますので、この水を使って酒をつくっています。日本酒というのは、原料の米を洗い水に浸して吸水させる最初の段階から、原酒のアルコール度数を加水して下げるまで、たくさんの水を使います。水の質が日本酒の味を決める重要なもののひとつです」。 作業場を見せてもらった。吊るされたネットに入れられた米が、水に浸されていた。これを蒸し、麹を混ぜたものが酒母。(仕込み)は、この酒母を発酵させることを言う。取材した日は、日本酒の最高級品・大吟醸の仕込みに入っており、実際にそこを見ることはできなかった。吉崎酒造では岩手から来た杜氏が3名、仕込みの管理をしているそうだ。 吉崎さんに開放されている井戸の場所を聞くと、「街道沿いは混みますし、車を止める場所もないので、商店街を通りすぎたところにある井戸がいいでしょう」と教えてくれた。
●飲み隊 商店街から鴨川方面へ向かい、大きく左カーブした道の右側に車が数台止められる場所があった。久留里藩最後の藩主・黒田直養が晩年、茶室にしていた雨城庵跡だ。茶会に使われた井戸が、今も自噴している。この日も入れ変わり立ち代り水を汲みに人が来ていた。 ここには土日のみ開く地元野菜の直売所もあり、店の前には朽ちた杭が2本突き出ている。「これは茶室の門の跡だよ。店の上に掛かっている藤棚も、殿様が植えた藤のために作られたんだよ」と店のおばさん。藤は樹齢130年の見事な古木。毎年夏になると、白い花が満開になるそうだ。 井戸には何個かのコップが置いてある。飲んでみると癖も匂いもなく、さらりと喉を過ぎていく感じだった。名水と呼ばれる所以だろう。お茶やコーヒーで飲むとその美味しさがよく分かるそうで、毎週汲みに来る人も多いという。「この水はダイエットや美容にもいいからね」とおばさん。女性が多いのはそのせいだろうか? 興味ある人はぜひ試してみてほしい。 (米)※写真キャプション・洗い米を浸けている樽。昔はザルで浸け、それを曽瓦(米を蒸す道具)に人の手で移し変えていた。今は機械で移動する。