千葉県の最高峰は丸山町の愛宕(あたご)山。408mの標高は、全都道府県の最高峰中最も低い。しかし、房総の山々は複雑で起伏に富み、うっそうとした樹林は山深い印象。夏の低山ハイクは、暑いのであまりオススメしないが、大多喜町と天津小湊町にまたがる麻綿原はアジサイの咲くこれからがベストシーズンとなる。今回は平坦な林道が歩きやすい清澄寺から麻綿原への3.4キロの道を歩いた。
●1200年の歴史房総の古刹清澄寺
町営の無料駐車場に車を置いて、土産物屋が並ぶ参道を進むと、山門前に出る。清澄寺は、NHKの大河ドラマ『北条時宗』にも登場する日蓮上人が開祖。1232年12歳の時、小湊からここに入って出家。修行に励んだ後、諸国を回り32歳の時帰山して悟りを開いたと伝えられている。
境内には、本堂、中門、仏舎利塔などが点在する。周囲はうっそうとした森。なかでも天然記念物の大杉は見のがせない。幹の回り14m、高さ47m、樹齢こそ不明だが「千年杉」と呼ばれ、全国でも有数の大きさを誇る。
●房総の尾根をたどるハイキング
麻綿原への道は、清澄寺山門脇の林道を左へ進む。車止めのゲートに突き当たるが、通り過ぎてどんどん歩こう。木立の中の道は、夏でも気持ちよく歩ける。周辺は東大の演習林となっているだけに、房総の自然が残る貴重な山域。それぞれの林には、実験目的が記されたメッセージボードがあり、興味深い。清澄山系は、県内でも最も温暖多雨な地域。東京湾に流れる養老川や小櫃川、太平洋に注ぐ夷隅川などを分ける源となっている。
このコースは、房総ふれあいの道のなかの「あじさいのみち」とも呼ばれる。目にしみる緑が、時折開ける尾根筋では、吹き抜ける風が汗した額に心地よい。再び車止めのゲートに出たら、麻綿原はすぐそこだ。
●アジサイ壮観 麻綿原
道の両側にアジサイの花が見えるようになると天拝園。平安時代より山岳宗教の場として開かれ、鎌倉時代には日蓮上人が「南無妙法連華経」を唱えた場所として伝えられている。
昭和26年頃より、この寺の和尚本成院日受上人が、法華経の6万9千384文字の数に合わせてアジサイを植え、麻綿原はアジサイの名所として知られようになった。その数は20万株ともいわれているが、現在イノシシやシカの害でその数は4万株にまで激減してしまったという。ここに植えらている品種は、ほとんどが晩生の日本アジサイ。麻綿原の気候も影響して、見頃は7月と少し遅い。
現住職、蓑輪顕寿(みのわけんじゅ)さんは「お寺はセブンイレブンのように24時間開かれた所でなければなりません」と、分かりやすく説法をしてくれた。本堂前に掲げられた『女人は、をとこを財(たから)とし、をとこは女人を命とす』の日蓮の言葉も印象的。
天拝園とは一年中日の出が拝める所という意味。展望台からは、房総の山並みの向こうに勝浦や九十九里方面の太平洋が一望出来る。
毎年、本成院日受上人の月遅れ命日(7月の第3日曜日)には、上人が好まれたそばが来園者にふるまわれる「中興開山会」が催される。「日本の残したい音風景百選にも選ばれたヒメハルゼミの声を聞きながら、そばを味わっていただけたら」と住職は話す。一服したら、来た道を引き返そう。(国)
天拝園
でんわ 0470−85−0330