房総半島のど真ん中。変化に富んだ渓谷美と自然に抱かれた養老渓谷は、最も遅い紅葉が楽しめるスポットとして知られています。渓谷周辺には様々なハイキングコースがありますが、今回は吹く風に秋を感じながら、ゆっくりめぐっても1時間足らずの中瀬遊歩道を歩きました。
紅葉時期にはハイカーでにぎわう小湊鉄道『養老渓谷駅』を過ぎると、養老温泉郷が見えてきます。温泉街の中、赤い欄干があざやかな『観音橋』のすぐ向こうが中瀬遊歩道の入り口です。車を置いて坂を下ると、向こう岸まで続く飛び石で川を渡ります。目の前の建屋は、小湊鉄道株式会社が運営するキャンプ場の管理事務所兼売店です。
渓谷のせせらぎに張り出すようなオープンテラスは、正面にそそり立つ絶壁が見わたせる絶好の紅葉スポットとなっています。「小さなモミジから色づき始め、段々大きな木へと染まって行きます。このポイントは、絶壁に西日が当たる午後3時半ころから日没前までが最高です。見頃は、11月中旬から12月上旬まで。でもここで一番大きなモミジは賑わいが引けてからが本番なんです」と、管理人の澤木勝利さんは教えてくれました。「訪れる人たちとの出会いも楽しみ」と、看板も自然大好きという澤木さんの手作りです。
テラスでは、材料持ち込みでバーベキューを楽しむこともできます。大きな荷物や重いものは、川を渡したワイヤーのリフトで運んでくれるので安心。また、澤木さんが材料から吟味して焼く石焼き芋は、アユの塩焼きやキノコ汁と共にここの人気メニュー。食欲の秋を満たしてくれます。
夏の間キャンパーでにぎわった野営場は、今はひっそりと静寂の空間。木々が秋色に染まり始めた園内には、高原を思わせるロケーションもあります。今の季節、キャンプ場は閉鎖されています。一声かけて入りましょう。キャンプ場を後にして、上流に遊歩道を進むと再び飛び石。しばらく行くと、対岸に切り立った断崖絶壁『弘文洞』跡が見えてきます。支流の蕪来川(かぶらいがわ)を川廻ししてつくった隧道(トンネル)ですが、昭和54年大音響とともに崩壊し、今は切り通しとなっています。
再び飛び石で対岸に渡り返して川沿いを行くと、渓流沿いにアヒルが遊ぶ赤い共栄橋が見えて来ます。橋を左に進み、トンネルを抜けると旅館街へ出ます。コースは1本道。迷うことはありませんが、増水時は飛び石が沈没してしまうこともあるので要注意です。日帰り温泉が楽しめる宿も多いので、ゆっくりお湯につかるのもいいですね。菊花展、紅葉まつりと、秋はイベントも多い養老渓谷ですが、シーズンが終わり静寂が戻る頃、カワセミを見に訪れる人も多いといいます。秋の深まりと共に、ドラマチックに変化する養老渓谷です。 (国)