梅もほころび始め、春間近の農業センター(市原市安須)。いま大温室では、春を飛び越して初夏を思わせるトロピカルな『ベゴニア展』が開催されている。
芝生広場の向こう、展示大温室の前に並ぶのは、冬枯れにひときわグリーンがあざやかなコニファー。入り口には、花と緑がアレンジされた1メートル四方の植物アートの額。温室内に一歩足を踏み入れれば、思わず上着を脱いでしまう気温20度。熱帯植物が茂る正面中央温室には、色が変化する琉球朝顔のクリスタルブルーや真っ白いアマゾンユリが、妖しく咲く。
農業振興の拠点として30年前にオープンした農業センターは、隣接するアズ植物公園とともに、憩いの場として市民に開放されている。1月末から袖温室で開催中のベゴニア展は、地産地消の発信拠点として新に動き始めた農業センターが、市原の生産者を市民に紹介する初の企画展。「市原には、全国的に有名な生産地であるにもかかわらず、市民のみなさんに知られていないものが数多くあります。このゴールドクレスト(コニファーの種類)は、海保の井口繁利さんの栽培によるものですが、市原は全国シェアナンバーワンです。癒し系の針葉樹の香りが部屋の中で楽しめる観葉植物として人気です」と、農業振興課課長補佐の藤田仁一さんは説明する。
そして、今回の企画展の主役は表情豊かなベゴニアたち。色彩豊かな花を楽しむエラチオール系のベゴニアは、温室をいっそう華やかに彩る。なかなか見られない貴重種も展示されているという葉を楽しむレックス系のベゴニアには、お宝級のものも。大型で個性的な模様や色彩が豪華だ。どちらも米原の生産者、古滝義己さんの花農場で育てられたもの。「ほとんどが市場出しなので、地元の人が知る機会がありません。今後は、このような生産者と消費者の交流の場を、当センターが提供していくつもりです。こんな企画がしたいという提案が、生産者サイドからあがって来るのを期待しています」と藤田さん。期間中、エラチオールベゴニアとコニファーは、同センターで販売もしている。
もう一方の袖温室は、花や観葉植物をアートに表現した小さな美術館といった雰囲気。今回の会場レイアウトは、センター職員と生産農家の協働によるもの。限られた予算の中で共にアイデアを絞った手作りという。一つひとつ鑑賞していると、時間が経つのを忘れてしまう。温室に入る光の方向で植物の表情が変わると、撮影のために何度も訪れる写真愛好家も多いそうだ。「多くの方に楽しんでいただける場所にしていきたい」と、同センター職員は張り切る。ゲストハウスにリニューアルした農業センターの大温室、北風の吹く外とは別世界だった。 (国)