花も木も動物も命あふれる初夏。さわやかな風に誘われて、出かけて来たのは姉崎椎津の台地。臨海コンビナートが見える平成通りと交通量の多い久留里街道が交差するエリアにもかかわらず、そこには里山と緑豊かな森が広がっていた。
JR姉ケ崎駅から至近距離にある椎津台地。埋め立てによって海岸線は遠くなったが、かつては目の前に海を望む別荘地があった所としても知られる。昨年開通した平成通りの椎津新田大橋から、道を入った所にある姉崎運動広場周辺には、豊かな自然林が残る。夏を思わせる日、木陰でストレッチするのは姉崎に住む安藤博之さん(72)。「市街地がすぐそことは思えない静かな場所です。3日に1度は、ここで汗を流します。1週500メートルの運動公園を回周したり、ウグイスのさえずりを聞きながら谷津田から堰へめぐる森の中のコースも気に入っています」と、いつものウォーキングコースを教えてくれた。
テニスコートと野球場のある姉崎運動広場駐車場に車を置いて、谷津田へはテニスコート裏から階段を降りる。上から見る里山は、まるでジオラマ。田植えが終わった田んぼに光が反射してまぶしい。子どもたちの自然観察教室も開かれるここでは、クサガメ、ドジョウ、オタマジャクシなどが見られる。コースがあぜ道から木のトンネルとなった先は、潅漑用水をたたえた唐上の堰。池ではカイツブリやアオサギをはじめ、運が良ければカワセミを見ることもできる。
葉桜となった並木が続く水辺の道は久留里街道へと続くが、ここは小鳥のさえずりを間近に聞きながら、新緑のトンネルが続く坂道を右へあがっていく。ノアザミやハルジオンを愛でながら木々の間から堰を見おろすと、かなり登って来たことに気づく。途中、道を入ると急に目の前が開け、台地には茶畑が広がっていた。そのまま、しばらく林間を道なりに行くと、椎津新田地区の家並みが見えて来る。
家々の敷地の広さ、庭木の見事さにおどろかされるこの通りは、昨年の市原市都市景観賞にも選ばれている。今の時期、イヌマキ、ベニカナメ、キャラなど、生け垣の新芽が美しい。「昔、椎津は漁師町でした。広い庭は、海岸で採った海苔を干すためのものだと聞いています。今、なぜかこの地区には植木屋さんが多いんですよ。これからは、サツキが通りを彩ります」と、地域の人は話す。昔の風情が残る家並み。手入れの行き届いた庭。緑を堪能しながら通りを後にすれば、運動公園はすぐそこだ。
公園、田んぼ、水辺、林、美しい生け垣。自然と人の手が入った両方の緑が楽しめる道は、短いながら変化に富んでいる。ゆっくり歩いても30分足らず。気軽に森林浴できる場所として、地域住民に親しまれている。(国)