小湊鉄道里見駅から約2km。そこに、一度は忘れられていたものの、有志の手で再び姿を現した滝があるという。大滝という地名の由来ともなったその滝。再生の中心『土太郎の滝を守る会』で飯給(いたぶ)出身の松本靖彦さん(60)に、滝と緑まぶしい周辺地域を案内してもらった。養老渓谷へ向かう清澄養老ライン。車を少し停めて歩くと、そこには、心なごむ里山の風景が広がっている。
滝は、駅前の消防署向かいの細道を入り、砂利採掘場を過ぎた山道を2、300m程入ったところにある。かなり幅の狭い砂利道なので、十分注意が必要。やがて右側にザーッと言う水音が。「あれが土太郎のドンドン(=滝)だよ」と松本さん。三段の滝で落差約10m。滝壺は深く青い色をたたえていた。小さな標識近くの斜面を降り、滝壺に近づく。ひんやりした風が心地良い。
「立派だろう。これほど落差のある滝は、市内では養老渓谷を除いて、この滝ぐらい。子どもの頃はもっと水量も多く、友達と水遊びしてたね。でも、妖怪が出るという噂があって、夜近くを通るときはそりゃ怖かったよ」。滝の水が小砂利を洗う音から『アズキアライ』という妖怪の伝説が生まれ、ドンドン(滝を流れる水音に由来?)という滝の名が付けられた。いずれもかつての豊かな水量の証だ。
そんな滝の存在もいつしか忘れ去られていた今年の4月。松本さんは市のイベントの下見に、この滝を訪れた。「昔を思い出して来てみたら、水音はするものの、周りは笹藪に倒木、おまけに古タイヤなんかの不法投棄まである。砂利採掘でもう滝は消えたと思ったから、残っていたのは嬉しかったけど、これは何とかしなくてはと」。かつての姿を取り戻すための作業は、地元有志と加茂中の子どもたちで、約2週間かかった。今でも定期的に清掃に訪れる。上流には水田があり、採掘跡の植林も進んでいるため、今後はもっと水量が増えるのではと、松本さんは期待している。
清澄養老ラインへ戻り、さらに南へ。飯給交差点手前の細道を入ると、山間のそこには美しい曲線を描く田と手掘りの水路が残っていた。「私はこの自然の曲線が何とも言えず好きで。基盤整理で、整った四角い田が増えたけど、まだ山間にはこうして残っている。曲田(まがりだ)は大型機械が入れづらくやめる人も多い。昔ながらの風景は人の汗が保ってるんだよ」と松本さん。炎天下の中、畦の草刈り作業中だった田辺祐一さん(65)は、「今やらんと田に害虫が入るから。まあ辛いは辛いけど、先祖が守ってきた土地だしこれからもやっていくつもりだよ」と汗びっしょりに、笑顔で話す。
そんな曲田は、里見小学校前の小山橋、南部老人福祉センターを過ぎた境橋からも眺めることが出来る。昔ながらの曲田と蛇行して流れる養老川。小山橋では、小さな滝の姿も垣間見える。
「教員時代は悪さをする子たちを飯給の家によく泊めたよ。自然の中に入ると顔つきも変わるね。自分もふる里の人や自然に触れると心がほぐされる。四季それぞれに見所ある風景は、どれも自慢できるものばかりだよ」
水の豊かなこの地区ではあちこちに自噴井戸がある。冷たい水に涼を取りながら、改めて市原の魅力の一つ、人と自然の豊かさを思った。 (野)
【注意!】加茂地区ではゴミの不法投棄が大きな問題になっています。各自ゴミは持ち帰りましょう。
また、田の畦は柔らかいため、見学の際、中に入らないようにしましょう。