ブドウといえば秋の味覚の代表だが、ここ『市原市柏原黒須園』のブドウ畑では、盛夏のフルーツ。毎年、夏休みはブドウ狩りを楽しむ人で賑わう。シーズンを前に、ナシ畑の中にあるブドウ畑を訪ねた。
柏原黒須園へは、迷路のような細いマキの生け垣の道を行く。果樹栽培を中心に営む黒須家の歴史は古く、400年前徳川家康の時代にさかのぼる。「先祖は武蔵国の武家だったようです。房総へ落ち延びて来て、この地で農を糧としたのでしょう」と話すのは、園主の黒須祐夫さん(71)。昭和43年に建て替えるまで茅葺きだったという母屋には『槍の間』があったという。今は門扉が残るだけとなった長屋門も、戦前まで左手が米倉、右手が馬屋として使っていたと話す。
黒須家の歴史を見守ってきた立派な屋敷林の中でも、特に目立つのが周囲約4メートル、高さ約20メートルのカヤの大木。推定樹齢400年のカヤは、市内でも一番の大きさ。そばには、市の保護樹木に指定された看板が立つ。寺社ならともかく、個人宅にこのような巨木があるのはめずらしい。「昔、屋敷林に続く裏山には大きな木がたくさんありました。戦時中、軍隊に供出したり、開墾して畑になったりしたので、今残っているのは数本だけです。子どもの頃、カヤは大きすぎて登れなかったけど、このマキの上からは、2キロ先の海もよく見えました」と、屋敷林には少年時代の思い出も数多く残る。
明治期から、ミカン、モモ、ナシと、果樹を栽培してきたという黒須家。母屋のすぐ隣はナシ畑だ。ブドウ畑はその少し奥、ナシ畑に囲まれるように広がっていた。摘粒作業が終わり、すでに袋掛けの作業が完了。どの品種も収穫を待つばかりだ。どうして、ここだけブドウ畑?に「ここは水はけが良すぎて、ナシ畑には不向き。以前から、もぎ取りのできる観光農園にしたいと思っていました。
20年前、品種改良で房総でもブドウ栽培が可能になったと聞いて、始めました」と黒須さん。完熟すると触れるだけで実が落ちてしまうナシに対し、ハサミでツルを切って収穫するブドウは観光農園向き。盆用に人気のある早生種のバッファローは8月初旬から収穫し始めるが、味も良くめずらしいことも手伝って毎年品不足になるという。
ブドウ園のオープンは幸水ナシの収穫が一段落した8月13日(土)から。その頃には、大粒種のフジミノリや、種なし巨峰も収穫時期を迎える。450坪のブドウ畑には、様々な種類の苗木が12本。1本の木で約100坪のブドウ棚にツルを伸ばし、1200もの房をつける木もある。「大きな房は見栄えは良いが、糖度が高いのは1房700グラムくらいがオススメ」という。天候により多少のズレはあるが、もぎ取りは9月中旬まで可能。時代と共に変化する消費者ニーズにあわせ、新品種栽培にチャレンジするのが楽しみという黒須さん。来年は、ピオーネも本格的に収穫できると話す。
自ら収穫する楽しさが味わえる観光農園では、フレッシュさと直売ならではのリーズナブルな価格も魅力。黒須園は入場無料、試食サービスあり。もぎ取った分だけの買い取り方式。駐車場は敷地内に10台ほど。巨峰の味覚狩りとあわせて、歴史を感じさせてくれる敷地内の巨木もお見逃しなく。(国安)