姉崎から久留里街道を下り、袖ケ浦市に入って約2キロ。上泉地区で南総昭和線との交差点を右折すると、すぐに広大な水田地域になる。少し色づいた稲穂が頭を垂れ始め、暑い陽射しの下にも、秋が近づいていることを感じさせる。その田園風景の一画、今年の4月に完成した袖ケ浦農村公園『ひらおかの里』を訪ねた。 風に吹かれる稲の中、遠くから見える平屋の黒い屋根が『ひらおかの里』。この地域の土地改良で、岩井・下泉・永地地区の余剰地を集め、農村と都市住民の交流を目的に作られた公園だ。3地域の14名で発足した管理組合が、袖ケ浦市から委託されて田畑の世話や管理をしている。
駐車場からエントランス広場へ入って、最初に目を引くのが2台の水車。この一帯の田を潤す浮戸川の水路から、園内に水を汲み上げている。大きな木製の車の両脇に付けられたいくつもの小さな桶が、水車の回転によって樋に水を流し入れる。「みんな近くに寄って見てますね。年配の方は懐かしいと言いますし、小さいお子さんは珍しいのか、一生懸命のぞき込んでいます。汲み上げられる水は川の水ですから、時には魚やザリガニ、ドジョウなどが入ってきて、園内の水路で見つかります。子どもたちが嬉しそうに捕まえていますよ」と組合長の齋藤勇さん。
園内の田畑は、すべて体験用。畑は袖ケ浦市で年度末に翌年の利用者を募集。今年度は17家族66名が参加、ジャガイモやサツマイモ、落花生などを収穫し、持ち帰りする。田は袖ケ浦市内の小学生対象。弥生時代、中世、明治と3つの田があり、それぞれ田の形が違うので、整備されてきた区割りの様子が分かる。弥生時代の田には古代米、その他の田にはコシヒカリが植えられ、来月には稲刈りの予定だ。
公園の管理棟には、農家から提供された古い農具が置かれている。牛につけた代かきの鍬、むしろを編むための器具など、倉庫の奥にしまわれていた物ばかり。希望すれば、管理当番の農家の人たちが使い方などの説明をしてくれ、時期によってはこの道具を使って農作業の体験もできる。管理棟の3分の1は広い土間。2面に壁がなく、田を渡る風が吹き抜けて、思いのほか涼しい。「ここは自由に使える休憩所。周辺をウォーキングしたグループ約20名がお弁当を食べました。ドライブ途中やトイレなどに立ち寄る方も多いですね。気分転換に園内を散歩して、持ってきた飲み物でお茶をしたりしています」と齋藤さん。
公園に隣接して、袖ケ浦市が農道を舗装した『フットパス・緑の小道』がある。田の間を巡って広域農道に出る遊歩道で、目の前をトンボが横切ったり、鷺がすぐ近くから飛び立ったりする。広域農道は、浮戸川沿いを袖ケ浦市街へと向かう道路。地元の人たちがボランティアで四季折々の花を植え、フラワーラインと呼ばれている。これからコスモスが盛り。川沿いの農道約4.5キロには、今年、桜の若木も植えられ、地元では来年の春を楽しみにしているそうだ。(米澤)