シティライフ株式会社

NO.114

風に吹かれて出かけてみれば

 ―市原市 海保―

 芸術家たちが集う里山

 

 

 どこまでも青く高い空 に、色づいた柿やミカンが映える。稲刈りの終わった田んぼが広がる里山は、すっかり秋色に彩られた。豊かな自然に囲まれた晩秋の海保に、芸術の里を訪ねた。
 県道姉崎茂原線から見える海保の小高い丘に、本格的な登り窯を備える『夢陶房』がある。定年後は大好きな陶芸を楽しみながら仲間と語らう場にしたいと、吉川寅夫さん(67)が現役時代から自らの手でつくりあげた。果樹栽培の盛んな海保地域だけに、陶房周辺には、柿、梅、桃、無花果(イチジク)の畑が広がる。「全国各地の窯元を見て歩きましたが、ここには私のイメージした条件がすべてありました」と、吉川さんは語る。
 転勤先の福井で陶芸を学び、再び市原の臨海企業に勤務していた18年前、地主の理解と好意で借りた400坪の土地。10数年の年月をかけて、コツコツとつくった作陶のための施設。中でも圧巻なのが、定年後の2000年に完成した登り窯。エンジニアだった吉川さんは、燃料の薪に灯油を併用することで煙の出ない無煙窯を可能にした。3日3晩といわれる窯焚きを、1日半に短縮。しかも、通常捨て間と呼ばれる素焼きしか出来ない上段も本焼きが出来る画期的な窯は、釉薬の流れ模様が全体に安定して出せるのが自慢だ。「在職中には、なかなか形にできなかった夢が、今形になりつつあります。自分だけで楽しむにはもったいないので、多くの人に来ていただける交流の場にしたいと思いました」と、市外県外から多くの仲間が集う。
「ここから見る夕日は絶景です。それにここは、一年中花が絶えない」と、吉川さん夫妻が案内してくれた敷地内は、四季を通じて折々の花が彩る。これから冬を迎えるというのに庭にはタンポポの花が咲き、エントランスの土手には水仙が小さな蕾をたくさんつけていた。「毎年、12月には香りの良いニホンスイセンが斜面一面に咲きます。レモンやハマナスの実はこれから収穫してジャムにします。陶芸の他にも、することがたくさんあって」と、奥様のキク枝さんは里の恵みをあますことなく活用して楽しんでいると教えてくれた。
「最近新たに竹炭窯を完成させました。炭だけでなく無花果や梨の枝を焼き、その灰を釉薬に海保の粘土で作陶した市原焼きにも取り組んでいます」。登り窯に火を入れるのは年に数回、自身の作品はもちろん主宰する陶芸教室の仲間たちの作品も焼く。陶房には多くの芸術作品が展示されているが、カンタンに作れるようにと吉川さんがデザインしたユーモラスなオタマジャクシのお玉掛けは、リーズナブルな価格が人気という。
 すぐ近くで若い陶芸作家が窯を開いたり、俳句仲間や染色家も活動する。陶房の近く、丘の上には会員制で油絵を楽しむ『アトリエ市原』(代表片岡英明さん)のアトリエもある。海保は、吉川さんの想い描く芸術の里になりつつあるようだ。
 さて、あちこち散策してお腹がすいたらミカン狩りと地域の食が楽しめる『房総十字園』はすぐそこ。12月20日まで開園中。食欲の秋を求めて足を伸ばしてみては。(国安)

問い合わせ/夢陶房(吉川) TEL.090-1885-6630
問い合わせ/アトリエ市原(片岡)TEL.090-7282-0325
問い合わせ/房総十字園 TEL.36-4021

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