澄みきった空に、燃える紅葉が美しい養老渓谷。関東で最も遅い紅葉が楽しめるスポットとして、11月末から12月中旬のオンシーズンには、多くの観光客やハイカーでにぎわう。その中で、静かな秋が楽しめると人気なのが『いちはら市民の森』。小湊鉄道月崎駅から約1キロ、稀少な動植物が多く残る自然公園は、都市周辺の森林の中でも特に重要な森として林野庁から『生活環境保全林』エリアに指定されている。
「多くの里山が荒れていく中、30年前自然公園として市原市によって整備されたここは、人の手が入ることで豊かな自然が残されています」と話すのは、今年4月から指定管理者制度によって市民の森を管理する安由美(あゆみ)会代表の高山正市(56)さん。耕作放棄されたまま荒れていく地域の谷津田を耕すことで、里山を保全しようと活動する安由美会のメンバーの多くが、この森を遊び場に育ったという。
「117ヘクタールの園内、すみずみまで私たちは知り尽くしています。芝生広場は、その昔谷津田でした。園内にある散策路のほとんどが農作業や山仕事のため、村人が歩いた道です。ですから、やせ尾根にもかかわらず少々雨が降っても道はしっかりしています。現在、自然公園内での動植物の採取は禁じられていますが、30年前は秋になればキノコ、アケビ、山柿を採りに来たものでした」と話す。
安由美会が管理して半年「地域住民にとっては当たり前の自然ですが、訪れる多くの人が、豊かな自然の原風景を求めてこの森にやって来る事を知りました。当初は、公園らしくいかにきれいにするかに重点を置いて整備していましたが、今後はどうしたらこの自然を守っていけるか考えていきたいと思います。だれもが安心して散策してもらえるよう、遊歩道の安全確保をしながらも、稀少植物が自生している場所は花が実って種が落ちるまで草を刈らないようにしたり、アカガエルの生息地を保護するため、看板を立てて来園者のみなさんにご理解ご協力いただけるようお願いしています」と、園内を案内する。
市民の森には四季折々の風景を楽しむ散策路が10コース整備されているが、この時期は駐車場からゆっくり歩いても40分程度で往復できるもみじ谷コースがオススメ。園入り口にある管理棟にマップがあるので、立ち寄ってもらおう。素堀のトンネルを抜けると、森は一段と深くなる。道沿いにはリンドウ、紅葉を水面に映す池では飛び立つカワセミを何度も見かけた。沢沿いの落ち葉を踏みしめる道が木道になる辺りから、モミジの赤や黄が静寂の森を彩りはじめる。砂防ダムのある場所が谷津の一番奥となるが、足に自信のある人は丸太の階段を上がれば尾根をめぐる散策道へと続く。また、キャンプ場から上がる健脚コースをたどれば、『ちば眺望百景』にも選ばれた房総丘陵の絶景が展望台から開ける。
園内には食材持ち込みで、バーベキューが楽しめる施設も充実している。管理棟前には、安由美会が地域の谷津田で作った米をはじめ、旬の地元農産物が並ぶ直売所もある。会では市民の森を拠点に、食も含めた地域発信をしていく予定だ。今後は、森の入り口にあるモニュメントから駐車場までの谷津田を整備し、農体験もできるグリンツーリズムのプログラムも提供していきたいという。多くの市民に森のすばらしさ、里山のめぐみを体験してもらいたいと、12月3日?市民の森を会場に『もみじ祭り』を開催する。会では芋煮の無料サービスもする。年末には、園内の花見が丘をイルミネーションで彩る準備も進めているところだ。(国安)