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NO.26


東邦大学助教授 長谷川 雅美さん

ペットの野生化で変わる環境、生態系 〜 ペットとは一生つきあうことを考える 〜

 ペットブームと言われ、年間約1兆円の市場が作られているペット業界。犬や猫のほか、両生類やは虫類など、珍しい動物を飼う人も増えてきました。その一方、飼い主の都合で捨てられてしまうペットも少なくありません。

 今回は、県立中央博物館で行われた自然保護講座から社会問題となってきた「ペットの野生化」について。東邦大学助教授・長谷川雅美さんと横浜国立大学大学院生・竹中利明さんの講義から、長谷川さんの話を紹介します。 (米) 

 ペットの問題というと、まずほとんどの方が犬と猫を思われるでしょう。実は私の専門は野生動物の両生類なので、今日はペットのカメが野生化し、社会問題となっている話をします。
 皆さんが縁日やペット販売店で買うカメは、手のひらに乗る大きさですね。ところがこのカメの中には、成長すると両手を広げた位の大きさになるカミツキガメ、アカミミガメという北米産の種類がいます。餌を与えれば与えるほど大きくなるカメで、5年たつと両手で甲羅をつかまないと持ちあげられないくらいに育ちます。日本で昔から売られていたカメは、20センチ位にしかならない在来のイシガメやクサガメでした。ですから、大きくなるカメが売っているとは知らずに買ってしまう人も多いのです。しかもこの大きなカメは性格が凶暴で、すぐ噛みつきます。だから持てあまして放してしまう。大きくなって捨てられたカミツキガメが発見されると、テレビや新聞でも報道されるので、聞いたことがあると思います。
 野生化したカミツキガメは、九州から北海道まで、全国各地の淡水域で見つかっています。環境保護の面から考えても大きな問題です。まず、在来種のカメとの交雑。貴重な個体性が失われる可能性があります。たとえば沖縄本島では、台湾から輸入されたセマルハコガメが野生化し、リュウキュウヤマガメと交雑してどちらともつかない種類のカメが誕生してしまいました。状況は今も進行中で、増えているようです。  次に、食物連鎖から来る生態系への影響です。日本のカメは水草や小魚を食べています。アカミミガメやカミツキガメは体が大きいため、日本のカメの餌を大量に食べてしまいます。日本のカメに餌がまわらなくなり、在来のカメの生活が脅かされるおそれがあります。さらにカミツキガメは、小さなカメも食べます。ブラックバスを放流したとき、アユが食べられて減り、問題になりましたが、同じことですね。
 そして一番重要なのは、安全性です。野外で遊んでいる子供に大きなカメが噛みついたら大変なことになります。カメはサルモネラ菌を保有しているので、公衆衛生の面でも考える必要があります。自治体の中には、パンフレットを作り、川のそばに札を立て、学校に注意をして危険性を呼びかけたところもありました。カミツキガメは千葉県では印旛沼水系にかなりの数がいて、アカミミガメも生息地域が広がっています。どちらも繁殖状況や生態、環境への影響などを調査中です。
 カメは長生きで、飼い主と一生つきあってくれます。このカミツキガメもゴツくてカワイイと、愛情をかけて育てている人もたくさんいます。しかし、野生化したカミツキガメへの対策は、今のところ駆除するしかありません。捨てられたために死ぬしかなくなってしまったのです。犬や猫の問題とも同じですね。
 ペット野生化問題の解決には、地域の協力や市民のモラルが不可欠です。生き物を飼うなら、死ぬまで面倒を見ること。生き物を簡単に捨てることが、どれだけ自然環境、生活環境に影響するのか、知って欲しいと思います。

カミツキガメのメス カミツキガメの捕獲
 



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