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NO.33


寺 脇  研 氏

教育の構造改革 『週5日制と生涯学習』 自分で解決する力を育む

 2002年4月より学校教育が変わります。“総合的な学習の時間”という言葉は耳にしますが、私たちはその内容をきちんと理解しているでしょうか。文部科学省大臣官房審議官の寺脇研氏を招き、市原市の明神小学校と姉崎小学校PTA合同の講演会が開催されました。その一部をご紹介します。 (国) 

 100歳以上の人が1万人以上いる日本、人生仕事だけという人は少なくなっています。大人は楽しく余暇を過ごしているのに、子どもには“勉強しなさい”と言っても納得しません。“中学生らしくしなさい”と言っているお父さんやお母さん、じゃあ“サラリーマンらしく”“主婦らしく”生きていますか、ということになります。そのギャップに子どもたちは気付いています。○○だからこう生きなければならないのではなく、皆自分らしく生きたいと思っているのです。大人が変わらなければ、子どもに“ああしなさい。こうしなさい”と言っても伝わりません。
 10年前、学校で月1回だけ土曜日を休みにすることを決めました。親の3分の2は反対しました。学校が子どもを預かってくれないのは困るというのです。でも半年後、賛成が3分の2になり逆転しました。3年後の平成7年、月2回にしました。そして10年後、来年の4月からは毎週土曜日が休みになります。これは、子どもを家庭や地域に返そうというものです。親は楽できないですよ。
 私たちは、最初から週5日制を目指したわけではありません。10年かかって、子どもを育てる仕組みを構造改革しようということでした。10年前、いじめ、不登校、ひきこもり、自殺など、子どもをとりまく問題はたくさんありました。それらを解決することが命題でした。子どもが生まれた時、親は無事にすくすく育って欲しいと願います。でもこの10年間、子どもの体力は低下しています。また、イライラしたり、未来に希望が持てないという子も増えています。深刻なのは、やる気の低下です。だれも嫌いなことはしたくありませんね。でも、好きなことは命令されなくてもします。勉強をおもしろい、楽しいと思うには、今までの教育では無理です。だから構造改革が必要なのです。
 例えば、算数で三角形と四辺形の面積の求め方は教えても、台形は教えません。自分で工夫して考えさせます。スピードは遅くなりますが、自分で解決していく方がおもしろいはずです。実際の生活はもっと複雑です。時と場合によって“およそ”と“正確さ”を使い分ける能力も必要になってきます。ちなみに分数の計算がなぜ必要なのか、実生活の場面でどのように役立つのか、子どもたちが納得できる説明をどれだけの先生がして来たでしょうか。目先の点数より「どうして」「なぜ」に、手間をかける教育です。これまでの教える側中心の教育から学ぶ側中心の教育です。これからの不確実な時代に、自ら考えて対応できる子を育てていこうというものです。
 10年前始まった生活科でものを育てる教育を受けた子は、食や環境に対する考えが違ってきていると思います。いま生活科から、自ら学び自ら考える総合的な学習の時間へ。罰則があるからリサイクルするのではなく、地球環境に対して自分の意見を持つことから始まるのです。同じ目標で早くやる方が良しと教えられた現在の大学生は、優秀だけど人とのコミュニケーションは苦手です。これまでの教育の結果がここにあります。幸い生涯学習の時代、大学卒業後も学べる社会です。何か起こった時に対応できる能力を学んで欲しいと思います。
 算数が得意な子、体育が得意な子。子どもによって得意なものは違います。これからは、習熟度別の教育も可能になります。これは、差別ではなく違いです。お互い違いを認めなければ、世の中成り立ちません。いまの内閣を支持するのかしないのか。昔なら、どちらでもないと答える人がほとんどだったでしょう。でもいまは、はっきり言う人がほとんどです。思いは人それぞれです。では、人を殺してもいいのかという事になる。そこで、話し合ってコミュニケーションします。そして自分で考え、判断するのです。
「先生、ご飯とおかずを交互に食べるようにしつけてください」「親を敬うように言ってください」。10年前の親はそうでしたね。もちろんこれからも行政、学校、地域のサポートは必要ですが、“最後の責任は親ですよ”ということです。それぞれの家庭の事情もあるでしょう。一方的に押しつけたりはしません。
 基本的なことは国が、具体的な内容は各地域の自由裁量で決められるようになっています。でもそれを学校任せにしては困るのです。「国際交流するには外国語を学ぶ必要がある」「町の産業である農業を学ぼう」「福祉を理解するために障害者と交流しよう」どういう教育をしたいかは、地域で話し合って決めるのです。いままでは声を上げても聞いてもらえなかったかもしれません。これからは、学校は聞く義務があります。そして情報を示し、きちんと説明しなければなりません。ムチャクチャな注文をつけて来る人もいるでしょう。話し合えばよいのです。教育委員会やPTAだけでなく、地域の皆が納得ずくで学校を動かしていくのです。

寺 脇  研 氏(49歳・福岡市生まれ)
文部科学省大臣官房審議官 生涯学習政策担当
東京大学 法学部卒 『TVタックル』など、テレビ番組多数出演 『動き始めた教育改革』(主婦の友社)
『なぜ学校に行かせるの』(日本経済新聞社)他、著書多数

 
 



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