僕は小学校6年生まで神戸に住んでいました。その頃は学校の先生の秘蔵っ子でしたが、親の都合で横浜に移ることになったのです。僕は神戸が大好きだったので「絶対に引っ越さないで」と頼んだのですが、叶いませんでした。環境の変化、学校によるカリキュラムの違いなどから、だんだん先生や勉強が嫌いになり、成績が落ちていきました。叱られると「引っ越したせいだ」と反発。次第に斜に構えた人間になり、先生にも可愛がられなくなりました。大学は単車や車を買った返済のためにアルバイトにあけくれ、ほとんど学校には行かなかったですね。ただ時代はバブル期。好きなサッカーの雑誌出版社に就職することができました。 弟は東大を出て外務省に、妹は医者。コンプレックスのかたまりだった僕は、ひねくれまくり、もがいて、もがいて。「長男として何かしたい」「仕事だけは負けたくない」の気持で、29才のとき会社をやめ、スペインに渡りました。なぜスペインか。サッカーの専門誌にたずさわっていると、外国人の監督を評価しなければならないことも出てきます。ところが外国のサッカーはテレビでしか見たことがない。面と向かって自分の意見を言える自信がなかったのです。バルセロナのチームに興味ある人物がいたこと、スペイン語が日本人でも比較的習得しやすいことから決めました。 人見知りな性格もあり、初めの半年は様々な壁にぶつかりました。「あいつは甘い」と言われ、自身も「やっぱりオレはだめだった」と落ち込んで・何度も円形脱毛症になりました。そんな時に、色々面倒みてくれたセルジオ越後さんの「今は投資の時だ!人のやってないことしたら後でアドバンテージになるよ」の一言は大きかったですね。とにかく必死で勉強した2年間でした。僕がスペインで得たもの、それは『自信』です。
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さて後半は、皆さんの質問に答える形で進めたいと思います。まず「評論家とライターの違いは?」ですが。私情をはさまず公平な立場でジャッジメントするのが評論家、逆に人間性が出るのがライターです。表現についても僕は主観で書きます。ただ自分は間違っているかも知れないから、人の話は否定しません。あくまで「I think」でいきます。 「インタビューで大切なことは?」。それは対象者と良い人間関係を作ることです。どちらが上でも下でもない対等の関係が一番胸のうちを話しやすい。また相手がすごい人物のときは、自分の中に潜む『恐れ』が顔を出さないよう、卑屈になる部分を事前の勉強でたたきつぶしておきます。
「スポーツライターからみた日本人選手と外国人選手との相違点」。スポーツ選手に限らず、日本人は自分のない人が多い。すぐに目的と手段が入れ替わってしまう。例えば進学や就職。入って何をするかではなく、試験に合格すること、つまり入学・入社がゴールになってしまっている。
サッカーで言えば、大事なのはチャンスを作ることでなく、ゴールを決めること。いい試合をすることでなく勝つこと。目的が手段にスリ変わるのは、「これでいいのか、これでいいのか」の自問が足りないからだと思います。 「大変だった取材について」。松本幸四郎さんのインタビューで力んでしまったことですね。何かを引き出すには怒らせることだ、と考え「歌舞伎に未来はないんじゃないですか」と言ったところ「帰れ!」と言われました。スタッフに大変な迷惑をかけましたが、松本幸四郎さんは面白がってくれて、以来舞台の原稿の依頼をいただいています。感謝とともに`やってみるもんだなと思いました。 最後に「今後したいこと」。今『ぴあ』という雑誌で人物のインタビューをさせてもらっています。先程の松本幸四郎さんのほか、矢沢永吉さん、真田広之さん、小室哲也さんなど色々なメンバーに会わせていただきました。どのジャンルでも成功する人は、能力に対してある種の『おびえ』を持っているようでした。問題はそれから先です。何をすべきか。自信と同じくらい必要なのは『不安』です。『不安』が『自信』を押しつぶしたとき、その人の成長は止まってしまうでしょう。それを確信するために、今後も片っ端からオーラを発している人達にあってみたいですね。