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変化してきた子供たち 希薄な人間関係が教育の崩壊につながった

学級崩壊、という言葉が社会的に認識されたこの数年。学校の教育現場では、いじめや登校拒否、刺殺事件まで発生し、様々な問題が報道されています。市原市中央倫理法人会では、「学校教育崩壊の危機」として講演会を主催。市内中学校で教鞭をとってきた林秀一さんが体験、問題点などを話しました。

(米) 私は五井中、南総中、双葉中と勤め、最後も五井中でお世話になりました。私が生徒指導主任になったのは昭和56年、全国的に校内暴力の嵐が吹き始めた時でした。ただ、この校内暴力は全ての学校に起こったわけではありません。市原では昭和58年から59年、3校くらいだったと思います。ところが平成に入ると、いじめや登校拒否問題が全国的に浮上し、授業が成立しない、校内暴力、学級崩壊など「新しい荒れ現象」が起こってきました。この現象は大小の差はあっても全ての学校で起こっています。 最近の10年間で子供たちが大きく変わったことを象徴する言葉があります。ひとつは「孤食」。「食事を俺の部屋に運んでこい」と親に命令し、自分の部屋で食べること。次に「拒食」。まずい、嫌いと言って食事をせず、自分の部屋でスナック菓子など好きなものを食べる。最後は「プチ家出」。親から注意されたり叱られたりすると「ムカつく」と言って簡単に家出をし、友達の家を泊まり歩く、ということです。
 以上の三つの言葉は、子供たちがやりたい放題、勝手放題をしているということ。学校も同じで、教師の言うことをきかない生徒が増えています。授業中に校内をウロつき、お腹が空くと近所のコンビニに行く。喉がかわけば外に出て自動販売機でジュースを買う。注意しても戻るのは嫌だという。中には感情的になって暴力的になる生徒もいます。問題は地域にも広がっています。生徒が道路いっぱいに広がって下校していたので車のクラクションを鳴らしたら、よけるどころか道の真ん中で睨み付け、中にはバンパーを蹴飛ばす生徒もいたというのです。

 このような子供たちに共通する特徴は、自分の感情、欲望、欲求をコントロールする能力が育っていないことです。注意されるとムカつき、キレて暴力を振るう。キレるというのは、感情をコントロールできなくなることです。その能力が育たなかった理由は二つあると思います。生活が豊かになり、我慢、辛抱、耐えることが、ほとんどなくなったことです。お腹が空けば買って食べることができ、欲しいものもすぐに買ってもらえる。子供たちは自分の欲求を抑える必要がない。
それからしつけの軽視。しつけは古いという考え方が広がり、しつけが子供に感情をコントロールさせる訓練だと分かっている親が減ってきたことです。朝起きるには、眠くて寝ていたいという欲求を抑えなければなりません。毎朝親が起こしていると、やがて子供は自分の意志で起きられるようになる。それが生活習慣であり、しつけの意味だと思います。

相手の気持ちを考えられず、他との関わりが不得手な子供たちが増えてきている事も、いじめが深刻になった大きな背景でしょう。A君がいじめられているようだ、ということで調べると、クラスの男子生徒全員がいじめていない、と言う。そこでA君とどんな関わり方をしてきたのか聞くと、頭をこづいた、足をかけた、マザコンと言った、階段でちょっと押した、と男子全員から出てきた。彼らに、学級の男子全員で毎日そんなことをしていたらA君はたまらない、A君は学校に行きたくないと言っている、と話しました。そこで初めて子供たちは自分たちの行動がいじめだったと気づいた。
彼らはふざけていただけと思っていて、A君の気持ちは考えたことがなかったんです。 このような子供たちが集まっているのが学校です。いじめも校内暴力も学級崩壊も起こり得て当然だと思います。昔は貧しく、空腹を我慢し、欲しいものも買ってもらえず、暑さ、寒さとも戦わなければならなかった。どこの家も大家族、地域にも仲間がたくさんいて、折り合いをつけなければならなかった。
豊かな人間関係の中で子供たちは自分の感情をコントロールする力を養ってきたんです。個室にTV、電話を持つなど、豊かさの中では一人で過ごしても退屈しない。豊かさが人間関係を希薄にしていくのです。教育は、家庭、地域、学校で3分の1ずつと言われてきました。ところが人間関係が希薄になった家庭、地域での教育力は低下しています。学校はパンク状態、崩壊の危機を迎えています。これから来る、たいへん厳しい国際競争社会で、子供たちは生きていかなければなりません。未来を背負って立つ子供たちを、しっかり育て上げるのが私たち大人の義務だと思います。学校が教育の最後の砦となってきた今、この砦を支援、援助していって欲しいと思います。

写真説明
林秀一さん昭和38年、千葉大学教育学部卒。以後36年間、市内の中学校で教鞭をとり、昨年3月五井中学校を定年退職。
自費出版で実感的教育論「過激に変化する子どもたち」を著す。古敷谷在住。

 
 



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