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NO.12

歌集「古堰のほとり」を出版

加瀬正夫さん (67才)
趣味は手品・将棋(素人4段)・家庭菜園

“将棋指し旅詠む幸もこの妻のありてぞ老後を携へゆかむ”

 今年5月下旬、国分寺台に住む加瀬正夫さんが、自費で歌集『古堰のほとり』を出版しました。歌集には家族や時代、自然や社会現象などを歌った525首が収録されています。

▽歌をつくり始めたのはいつ頃からですか。
◆当時、会社の定年は56才でした。いくつか趣味はあったのですが、52才になった時「生きた証に何かを残したい」と思ったんです。いろいろ考えた末、短歌を選択しました。歌を通して子や孫に「父の人生」「おじいさんの人生」を想像してもらいたかったし。と言っても、短歌については何の予備知識もなかったんですけどね。
▽どのように勉強されたのですか。
◆まず『短歌年鑑』を買ってきました。意外にも市原市在住の歌人が載っていたんです。土屋正夫先生です。電話すると「家にいらっしゃい」ってことになって。先生は5・7・5・7・7の定型に表すために、ものをしっかり観察することをアドバイスして下さいました。2ヶ月かけて10首あまりを詠んだところ、その内の6首を先生の短歌雑誌『軽雪』に載せてもらえました。生まれて初めて活字になった時、とても嬉しかったです。

 リヤカーに屋台整へて
 まんぢゆう屋 若き日の
 夢限りなかりし


▽題材の選び方は?
◆待っていても題材はやって来ません。こっちから対象に迫って行かないと。物を見てじっくり考えたり、自分のおかれている状況とか、家族を見つめ直していると『歌づくりの時間』が、いつの間にか『感謝の時間』になっているんですよね。
▽作った歌はどうしていますか。
◆土屋先生主宰の雑誌『軽雪』への出詠と、『市原歌人会』、『市原短歌同好会』などで見てもらいます。同好会では一人一首を事前に提出し、名前を隠して批評し合ったり、指導者から添削を受けたり。皆で気に入った歌に投票したりもしています。ちなみに前回の投票で一位になった人の作品は「ものの名の さらりと出でぬもどかしさ 夫との会話 クイズのごとし」でした。
▽(笑)思い当たる人が多い歌ですね。
◆短歌って不思議ですよ。昔の作品を読みかえすでしょ。するとたった31文字なのに、その時の出来事とか心情とか、書いてないことまでアレコレ思い出されて来るんです。
▽そうですか。今回、歌集を出版されたきっかけは?
◆今年、母が満百才になります。しかも西暦2000年。私が短歌を始めて15年という一つの区切りにもあたり、この記念すべき年に形となるものを作りたいと思ったのです。
▽題名には何か意味があるのですか。
◆『古堰』とは西広の板羽目堰のことです。ご存知のように房総の清澄山系を源として、市原市の中央を南北に貫いて流れる養老川にあります。普段は基礎石しか見ることができませんが、平成6年度に農林水産省から「美しい日本のむら 景観コンテスト」の文化部門で大臣賞を受賞しました。市の有形民俗文化財にも指定され、私の散歩コースでもっとも好きな所です。季節ごとに移り変わる土手の景色や、川で遊ぶ水鳥は心を和ませてくれます。これからもこの素晴らしい環境のなかを歩き続けられるよう、願いをこめて題名にしました。

 板羽目堰の名残の基礎に
 生ふる藻をなびかせて
 うすく春の水ゆく


▽1頁目の最初を飾る歌は『狭庭より富士白く見ゆ われと妻 二年かかりて選びしこの地』。そして最後を締めくくる525首目の歌が『将棋指し旅詠む幸もこの妻の ありてぞ老後を携へゆかむ』。共に奥さんが登場しますが。
◆夫として父として、するべき事はしてきたつもりですが、やはり長い間には色々苦労もかけました。家族を支えてくれた家内へ「ありがとう」の気持ちを表したかったのです。
▽今後の目標は?
◆わかりやすく、詩情のこもった短歌を目指しています。人の心に、少しの間でも残ってくれる歌ができたら嬉しいですね。

「私は定年間近になって始めました。気持ちがあれば誰でも詠めます。『古堰のほとり』は稚拙な歌ばかりですが、興味のある方に差し上げます。参考にしていただければ」と加瀬さん。仲間がふえるのも楽しみのひとつ、と話します。 (不)        

歌集「古堰のほとり」
 



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