NO.106
水琴窟の音色に魅せられて 飯島 正行さん(47歳) 夷隅郡大多喜町
耳を澄ますと、まるでハープか琴のような音が聞こえてくる。不規則な間隔で、微妙に異なる清らかな音色に耳を傾けていると、心がしんとして癒されてゆく。 水琴窟(すいきんくつ)。江戸時代に庭師が考案した造園技術のひとつと伝えられている。 その仕掛けは、底に穴を開けた瓶を逆さにして土の中に埋め込み、つくばいを通じて瓶の穴から流れる水滴が、瓶に溜まっている水に落ちる時、反響する音を聴くというもの。 日本ならではの風雅な音文化・音風景ともいわれ、戦後、途絶えたものの、近年マスコミで取り上げられたことから静かなブームが続いているという。 睦沢町にある共同生活舎『こだま』敷地内に水琴窟があると聞き、作り手である職員の飯島正行さんにお話を伺った。 ◆飯島さんが水琴窟を作るようになったきっかけは? 「10年ぐらい前に、たまたまテレビで水琴窟の特集番組を見て。興味を持ったので調べて、栃木の寺を訪ね水琴窟の音を初めて聞いたのです。そして、その音の綺麗なことと、構造の面白さに惹かれました。ある本に水琴窟は小宇宙だ、と書いてありましたが、まさにその通りだと思いました。水琴窟の空間を考えると、上から落ちてくるのが雨であり、下に溜まる部分が海であると。作ってみようと思ったのは幾つかの水琴窟を見て回ったところ、できそうな気がしたので(笑)」 ◆それは、現在の介護のお仕事に就く以前に、ログハウスを造っていたという素地があるからでしょうか?陶芸教室に通い瓶から作り始めたそうですが、それも、ものづくりをする人間としてのこだわりがあったからですか? 「いや、単に時間があったから(笑)。瓶を自分で作ったのも、買うとなると高価でなかなか手が出ないからです。水琴窟と関わり、陶芸にも関心が深まっていくにつれ、自分の理想とする形の瓶を作りたいという気持ちも高まってきました」 ◆賑やかな場所や雨の降りしきる日などは、水琴窟の音を聞くことはできないのですか? 「いえ、できますよ。竹筒を水琴窟の上に置き、耳を当てれば外部の音がシャットアウトされ、竹が集音装置となり、かなりクリアーに聞くことはできます。ふだんでもマイクを使えば、いやでも向こうから音は入ってきます。そうやって聞いてもいいのですが、周りが静かで自分自身も落ち着いた気持ちになれば、かすかな音も聞こえると思います。というか、そのかすかな音を自分から聞きにいくのです。その時に聞こえる…格好良く言うと、出会える音というのがいいのかな。強引に自分の中に入り込んでくる音より、自分で聞く耳と心を持って聞く、自分が拾える音が心地良いのだと思います」 ◆今年3月に、ここで行われた『こだま・こだままつり・よっちゃばる』では様々なイベントが催され、水琴窟の音を聞かれた方もいたそうですが、皆さん、感想は? 「大半の方は、こんなきれいな音は初めて聞いたと言っていました。一般には、音の出方が不規則なので、予期せぬ時に音が出るのも良いと言われています。若い人や子どもは、非日常的で幻想的な印象を受けるようですが、水道の蛇口を閉めてもポタポタ落ちる音を聞いたり、屋根から直接地面に落ちる雨音を身近に聞いたことがある御年輩の方は、そうは受け止めないようですが、いい音だと言います」 ◆水滴の大小、下に溜まっている水量などの違いから、水琴窟の音は皆同じではないような気がしますが。 「同じかどうかは問題ではないと思う。自分自身がずっと同じではないように、たとえ同じものが鳴ったとしても、それをどう捉えるかは本人次第では。水琴窟の音については、人それぞれ、その受け止め方も様々で、また、その人の感性で感じ方も異なってくると思います」 ◆今後、水琴窟を造る予定は? 「特にありませんが、もし造ってみたいという希望があれば、一般であれ公共の場であれ、参加したいですね」(内田) ※水琴窟の音色を聴いてみたい方は、『こだま』へ事前に連絡を」
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