□クマに興味を持ったいきさつから話していただけますか?
僕とクマの出会いはかなり長いんだよね。東京の代官山に「ハニー」というお菓子の専門店をオープンしたのが30年前。そこのパッケージにクマを使っていて、なんとなくクマには興味があった。
その後、海外出張の際にテディベアの熱狂的な人気を目の前にして、海外から輸入したテディベアの専門店を開いたのが20年前のこと。テディベアは、手足首の5ヶ所が動く手作りのクマのぬいぐるみ。それまでの大量生産のクマに比べて、アーティストの個性が現れているクマがテディベアだったんだ。そのうち日本でも愛好家が増えて、7年前私が中心となって日本テディベア協会を発足した。
□協会ではどのような活動を?
会長として、世界のテディベアのコンベンション(大会)に出向いたり、日本でも展示会を開催してきた。今年の7月東京で行われたコンベンションでは、2日間で2万人もの人が訪れてくれてね。阪神大震災の時には、協会の名誉顧問をしているテディベア研究家のリンダ・マリンズさん(米国サンディエゴ在住)が、「一点物のクマを作り、日本のオノヅカへ送ろう!」と世界のアーティスト100人に呼びかけてくれたんだよ。それをオークションにかけたら2300万円もの売上げ。すべて神戸に寄付させてもらった。
□まさにテディベア愛好家の心が一つに集まったのですね。ところで、現在はチェーンソーを用い、クマを彫る教室を開いているとか。
2年前会社を整理しリタイアしてからは、クマ彫りの仕事が中心。去年の1月にアメリカのいとこを訪ねた時、庭に木彫りのクマがあってね。サンプルを買ってきて、自分で彫ってみた。思考錯誤しながら自分の形に彫り上げていったんだ。1年間に300体以上彫ったね。
□その手順は?
必要な大きさにカットした丸太の余分なところを、チェーンソーで大まかにカットする。次に目鼻口と細部を削る。彫っていると、木が語りかけている気がするんだ。森と一体になっているような…。そして最後に目を入れてクマと対面する。その時はもう感動ものだね。初心者でも顔だけなら、一日あれば彫れる。中級になると、ベンチなども指導している。
□クマを彫る材料は杉の間伐材を使っているそうですね。
千葉県もそうだけれども、今、森が荒れているでしょ。とくに植林した人工林は、本来は間伐して手入れをしなければいけないのに、商品価値がないとわかると、放置されたまま。一度人間が手を加えた森は、最後まで責任を持たないといけないんだよ。間伐材でクマを彫ることにより、人工林を守るための間伐を促すのと、それを有効に利用したい、との思いがある。
またクマを彫るもう一つの目的は、クマの棲めるような自然の森、本来の森を取り戻したい、というのもある。天然の森は、酸素を育み水を貯めて、そこに住む小動物から大きな動物まで多くの生き物を育んでくれる。つまり、木の実がなり広葉樹と針葉樹のなどのあるバランスのとれた森のこと。21世紀は人間が欲望のために手をつけすぎてしまった自然を、すこしずつでも直すことから始めないとね。
□最後にこれからの活動を教えて下さい。
今年の7月、その理念に賛同してくれる方達と、、フォレストベアクラブをたち上げた。全国にすでに5つ支部ができた。これからは、さらにネットワークを広げ、クマ彫りの指導者を増やし、作品の発表や販売の場を設けること。そして最終的には、「クマの棲める森」を甦らせるために、活動していきたいね。(H)