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NO.136

  

 見る、聞く、味わう、嗅ぐ、触る
 体で感じて発見する
 自然観察を楽しむ 
 
 袖ケ浦  麦野 裕さん

  
 地域の子どもたちから『虫の先生』と呼ばれている麦野裕(ゆたか)さん(62)。大手企業のサラリーマンとして忙しい仕事のかたわら、自然観察会や保護活動などに参加し、自然について学び始めたのは40代半ば。この10年間は、ボランティアの自然観察指導員として県内各地を歩き、体験したことや学んだことを『千葉の自然に親しむ会』の会報紙にエッセイとして連載してきた。今年8月、それをまとめた『幸せの植物楽』を出版。「今も身の回りの植物に新しい発見をして楽しくなる」という麦野さんにお話をうかがった。

◆自然観察に興味を持ったのは、古いお墓の石がきっかけだったそうですね。
「30代前半だったかな。上総博物館で行われた市民講座『石の見分け方』に参加したんですよ。講師に『古いお墓の石は舐めてみたらどんな感じ?』と言われて、ホントに舐めたら舌が石にピッタリ吸い付いてしまって。海底火山の灰が積もって石になり、スポンジ状になっているという説明でしたが、それを体を使って感じたことがとても面白かったんです。見る、聞く、味わう、触る、嗅ぐという五感を使うことは、体で感じるということですよね。それは体で知り覚える『生きた知識』。人は昔からそうした体験を積み重ねて、生活の道具などに自然を活用してきましたから、私もそれを知りたいと思ったんです。ですから私は、自然を学び始めたときも、現在、指導員で観察会を行っている時も、五感を使って触れることを大切にしています」
◆それで今回の本は、植物をテーマに、麦野さんがこれまで体験したエピソードをたくさん載せているんですね。
「ただ植物を紹介する本ではなくて、雑学的な楽しい本にしたかったんです。私が学んできたことや調べたことをまとめながら、活用してきたこと、試したことや感想なども入れています。植物や風景の絵を描く時、出かけた場所にある花や葉をすり潰して絵の具代わりに使うこととか、ツバキの実を炒って食べたらエグかったとか(笑)。私が使っている爪楊枝は庭のクロモジ、という紹介もしていますよ」
◆同じ街路樹の幹を触っていたら日によって様子が違うようだ、というお話しもありました。
「指導員になった後、銀座に通勤していた時、駅から歩いていく途中の街路樹に触れて思ったことです。植物も人と同じく個性があり、語りかけると和んだように感じられる。毎日、幹の太さも微妙に変わっているようです。自然は生きていて、多様性があり、しかも周囲と調和しているのだと実感しました。それが世界の基本でもあると。私たち人間は人工的に造りあげた世界で生活しているので、自然の世界を忘れがちです。けれど、自然を体感する場があれば、様々な生物が存在することや、自然への親しみ、一体感などを覚えて、とても豊かな気持ちになれますし、癒される。子どものころにどれだけ自然を感じるかによっても、感性や創造性を育む上で、大きな影響があるのではと思います。観察会での子どもたちは、小さな事でも自分で発見して、驚き、疑問に思い、それが楽しくて夢中になります。のびのび、イキイキとしている子どもたちは、それだけでパワーがあります。自然観察会は、自然を知るだけでなく、子どもの感性をはぐくむ場として、大切なんだと思います」
◆自宅近くの家庭菜園にも近所の子どもたちが遊びに来るそうですが、そこでも自然観察を?
「そうですね。私は3カ所畑を借りていますが、ひとつは住宅地に隣接した高台の上にあって、周囲が林で車も入ってこない、静かな場所なんです。ここで子どもたちは自由に遊んで、何か疑問があると聞いてくる。私も積極的に子どもたちと話します。子どもはススキを見て『きれいな噴水』と言う。面白い見方をしますから、勉強になります」
 植物とつきあう生活が、何より楽しいという麦野さん。「次は家庭菜園で気づいたこと、体験したことを『家庭菜園物語』としてまとめたい」と、毎日畑に通っている。(米澤) 
  



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