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NO.92

リビングがアトリエ  キッチンや庭で言葉が生まれる

詩画作家
  浅野照子さん(51歳)

 暮らしの中の食材や草花をテーマにした絵は、どれも生命力にあふれ力強い。角のない柔らかい書は、見る者の心にストレートに語りかけてくる。身長145センチ、体重39キロ。この小さな身体のどこから、これだけのパワーが生まれてくるのだろうか。この夏、幕張プリンスホテルで開催した13回目の個展には、全国から多くの浅野ファンが来場した。詩画作家の浅野照子さん(51歳)を市内松ヶ島の自宅に訪ねた。

□絵を始められたのは40歳の時だそうですね。
「あたしは何事もおろそかに出来ないたちだから、結婚当初仕事も家事も両方頑張ってたら病気になっちゃったの。そんで、天職だと思っていた看護婦を断念して専業主婦になったの。ある時、同期会に出席したら婦長さんになっていた人もいてね。“あたしこのまま埋もれちゃうんかな”って、とても淋しい気がしたの。そんで、あたしに何が出来るか考えたら絵だったんだよね。絵は子どもの頃から好きだったし、ずっと続けてたの。看護婦時代には、退院されてゆく患者さんに色紙をさしあげたりして、喜ばれましたね。だから2人の子どもが小学生になった時に家族を前にして“あたし今日から絵を描きます”って言ったら“どうぞ”ってことだったので、それがスタートね」

□絵の題材は身近なものばかり。言葉はどうやって生まれてくるのですか?
「あたしは主婦という姿勢はくずしたくないの。だから描くものも日常目にする花や野菜や果物や魚たち。いとしくて、いとしくてたまらないんだね。言葉は泉のように湧きあがってくるの。うまれてきたホカホカのそのまんまを書くんだよ」

□浅野さんの絵を見て涙する方も多いと伺いました。
「母に“仕事ぶりは人様が評価するもの”と言われてるんで、あたしは夢中でただひたすら描いているだけなんだよ。あたしが10年間の看護婦生活で学んだことは“朝起きて目が見える。手足が動く”そんな当たり前のことが、どんなにありがたくステキなことかってことなの。その感謝の思いを描きたいんだよね。あたしがここまで生きて来られたのは、すべてのみなさんのおかげだと思うの。絵を描くのはあたしなんだけど、その気力を与えてくれるのは家族であり死んだ父や田舎の母やご先祖様だと思うの。そして遠くからわざわざ高い交通費を払って見に来てくださるお客様ね。だから全身全霊をこめて描くんですよ」

□絵を描かれるのはどんな時ですか?
「今日は大作という日は、朝早く起きて家事を全部済ませて、座敷に座って夕方まで描きます。主婦だから夕ごはんの支度をしなくちゃなんないからね。だから絵は太陽の光の下でしか描かないの。描き終わった後は、力が抜けちゃってね。でも、家族が帰って来るまでに片づけなくちゃなんないでしょ。“やりたくないなあ”って、思う時もあるけど“これが私の生きる道”って、自分を励ますんだよね」

□どの絵にもパワーがみなぎって、元気づけられます。
「絵や詩はあたしの魂を注ぎ込む作業。与えられた環境に素直に感謝して、そこで努力して工夫を重ねる。それが絵になり言葉になって飛び出すんだね。あたしの生き方そのものが、作品となって表れる。だから謙虚な気持ちを忘れずに生きてゆこうと思ってます」
 
 房州弁の飾らないおしゃべりに、時間のたつのを忘れてしまう。個展とは別に開催される浅野さんのトークショーも人気だ。故郷、館山で開催される若潮マラソンにも39歳から毎年参加している。近所をジョギングする姿も、頭に手ぬぐいかぶって町内の清掃や庭の手入れをする姿も、浅野さんの日常のひとこまだった。 (国)

 
ぶどう(105×90cm) 柿(105×90cm)
 



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