「白い光が流れた」高橋力さんが下北半島ではじめて出会ったヤマセミのイメージだった。以来、20年以上にわたり養老渓谷で撮り続けてきた作品が10月末写真集として平凡社から出版された。特殊撮影でとらえたヤマセミは、これまで私たちが目にしたことのない姿ばかりだ。
□ヤマセミとはどんな鳥ですか?
「カワセミの仲間でハトくらいの鳥です。頭の冠羽が特徴で水中にダイビングして魚を捕らえます。生息数が少なく警戒心がとても強いので普通では見ることができません」
□地元の人でも知らなかったヤマセミの生息を確認するのは大変でしたでょう。
「小櫃川、夷隅川、養老川など支流も含め下流から上流まで歩いて調査しました。生息はすぐつかめましたが、撮影に適した場所を探し出すのに苦労しました」
□どうすればこんな写真が撮れるのですか?
「ヤマセミの生態を研究し、自分がヤマセミの目で、ヤマセミの立場で考えることが出来るようになって初めて可能になったといえます。調査のため仕事が終わってから川に出かけ、夜中にエサ場の使用状況などを調べました。時には明け方まで川の中を歩きまわったこともあります。こうした地道な努力の積み重ねが撮影全体の8〜9割を占めます。カメラを手にするのは年間通しても20〜30日くらいでしょう」
□ 中でも難しかった撮影は?
「技術面ではマルチ撮影です。飛行撮影に取り組んで完成まで7年かかりました。かけた時間、費用、難度、すべてにおいて私の技術の集大成といえます。保護の面では巣穴の撮影です。巣穴が放棄されるケースをいろいろ見てきたので人に知られないようにするのに一番気を使いました」
□高橋さんはヤマセミに認知されているのでは。
「よくそう言われますが、それはありません。ヤマセミにとって興味を持って近づいてくる人間ほどイヤなものはないでしょう。子育てする状況を,・e子の愛情,・ネどと人はトリを擬人化してしまいがちですが、厳しい自然の中で生きていくには、たとえ親子でも生存競争のライバルとなるのです。自然界では常に死と向かい合って生きていますから、人間の情で野生をとらえるのは間違っています」
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今回カメラマンの財産でもある技術を公開されていますね。
「真に価値があるのは創作であって、単なる模倣では意味がないと思います。一流のプロなら作品を見れば、ある程度技術の予想がつきます。私の場合は参考にする資料がなかったので、すべて自分で工夫して作り上げてきました。これを元に、さらに新たな技術を開発する人が出てきてくれたらうれしく思います」
自分の中にイメージがある限り撮り続けるという高橋さん。妥協のないヤマセミの生き方にひかれると語る本人にも妥協がない。この写真集は自分自身の記録でもあると話す。