笑い転げる男の子、ふくれっ面の女の子、泣きべそをかいている男の子…。子ども達の表情は豊かで、そのポーズは自然体だ。今にも動き出しそうな、お喋りが聞こえてくるような人形達。
人形の生みの親、鶴岡睦子さんは「子どもが大好きだから」と、子どもをモデルにした作品を作り続けている。
◇鶴岡さんは、横浜の『人形の家』等、県外での個展や展示会を開催してこられた。今年6月に大原町水彩ギャラリーで行ったのは?
「今回、町の水彩ギャラリーで開催したのは、大原町の文化祭に朝市のおばあちゃんやはだか祭りの子ども達をモデルにした人形を出品したら、個展の依頼がきたのです」
◇人形作りは、どんなきっかけで始めたのですか。
「私は生まれも育ちも大原町。高校卒業後に東京に出て就職しました。最初は事務職だったけれど、自分には向いてないと思い、グラフィックの学校に通い会社を変わりスーパー等のポップの仕事をするようになりました。そして、50歳になった時、まだ元気なうちに本当に自分のやりたいことをと会社を辞めたの。同時に大原に戻ってきて、自分は何がやりたいかと考えた時、子どもの頃に好きだった人形作りをしようと思ったのです」
◇人形作りは教室に通ったり、どなたかに師事したのですか。
「いいえ。体験教室には行ったけれど、自分の作りたいものではないと思いました。だって、結局その先生のコピーみたいな人形を作っていたんだもの。作り手の個性が感じられない。だから、私の場合は手本となるものがない自己流」
◇どんなところに鶴岡さんの人形の個性が見られるのでしょう。作り手としての、こだわりは?
「とにかく、子どもが大好き。可愛くて仕方ない。子どもをモデルにした人形を作りたいと思い続けてきた。いわゆる人形って、おすまし顔が多いでしょ。でも、私の人形は皆、喜怒哀楽が表情や体の動きに出すようにしているの。つるんとした顔は、あまり好きじゃない。あと、人形の服。ファッショナブルにキメた今どきの子ども服ではなく、ひと昔前のちょっとだらしなく汚い感じの格好が好き」
◇人形作りの難しさとは?
「動きのある人形を立たせるバランスが難しいですね。直立不動でなく何らかの動き、それと、表情。たとえば、怒っている子どもの表情は、目鼻口が怒った顔つきにするだけでなく、頬や目尻など筋肉の動きにも気を配ります」
◇人形の洋服も皆、描いているのですか。質感があって本物の布みたいですね。
「洋服や着物はサラシにゆるい粘土をつけて、生乾きのうちに人形の体に付け、ドライヤーで乾かしてから着色し、洋服の模様や柄を描き込んでいくのです。まれに手元にイメージ通りの布があれば使うこともありますが」
◇鶴岡さんの人形を見た方の感想は?先日、大原で開かれた個展では何度も、しかも毎回違う知人を連れて来場する人が多かったと聞きました。
「素朴とか懐かしいと言う方が多いですね。あと皆さん、人形を見ていると癒される、ずっと見ていたいとおっしゃる。奥様に連れてこられた男の方が、くいいるように見ていることもあります。また、『こりゃ俺だ』と子どもの頃の自分にそっくりだと言う方もいます。ふだん、ギャラリーや美術館に出向かない人達が気軽に来て下さり、何度も人形に会いに来て下さった。しかも、御自分の感動を他の人にも…という感じで誰かを連れていらっしゃる。そのことに私自身が驚きました」
◇一体の人形を作るのには、どのくらいかかるのですか。
「大原に戻ってきて落ち着いてから本格的に作り始めて、のめり込んじゃって2年で100体位作りました。でも、その後はだいたい1カ月で3体ペース。この10年で約500体作りました。結構細かい作業なので、疲れるから長くは集中してできないのです。だから、新作を加えた展示会を開催できるのは、せいぜい年に1回ですね」
◇今、作りたいと考えている人形は?
「夏なのでテーマは縁台で。下駄をはいた浴衣姿の子ども達をと考えています」
今後の展示会の予定は、年内は特にないとのこと。でも、「近場で依頼があったら考えます」と、マイペースでいく鶴岡さんらしい返事が返ってきた。(内田)